メンヘラちゃんとヤンデレくん!?

次の日。
授業中なのに、胸の奥がざわざわして落ち着かなかった。
怜くんの視線が、教室の端からずっと刺さっている気がする。
黒板を見るふりをして、ノートを取るふりをして。
それでも、息が浅くなる。
――重いって、言ったよね。
――それでもいいって、言われたよね。
放課後。
少し遅れて教室を出ると、廊下の壁にもたれて怜くんが待っていた。
「遅い」
責める声じゃない。
でも、逃げ場もない声。
「ごめん……」
それだけで、怜くんの表情がふっと緩んだ。
「いいよ。来てくれたから」
そう言って、私の頭に手を置く。
優しく、撫でる。
それなのに、なぜか涙が出そうになった。
「……今日、なんか元気ないね」
見抜かれてる。
隠してたはずなのに。
「私、たぶん……めんどくさい」
ぽつりと零すと、怜くんは一瞬だけ黙った。
「自分で言うの、禁止」
低い声。
肩を掴まれて、顔を上げさせられる。
「依音は、そのままでいい」
名前を呼ばれると、心臓が跳ねる。
「不安になるのも、泣くのも、重くなるのも」
指が顎にかかる。
「全部、俺のためでしょ?」
――違う、と言えなかった。
「俺だけいればいいでしょ?」
優しい声。
なのに、選択肢がない。
少し距離を取ろうと一歩下がると、 怜くんの手が、すぐに伸びた。
「どこ行くの?」
笑っているのに、目が笑っていない。
「離れようとしなくていい」
ぎゅっと、抱き寄せられる。
「依音が壊れそうなら、俺が縛るから」
耳元で、囁く。
「逃げなくていいように」
背中をなぞる手が、優しい。
でも、その優しさが檻みたいで。
――苦しいのに。
――怖いのに。
「……怜くんがいないと、私……」
震える声で言うと、怜くんは満足そうに息を吐いた。
「ほら」
「ちゃんと、依存して」
その言葉に、ぞくりとした。
メンヘラな私と、
ヤンデレな彼。
噛み合ってしまった歯車は、
もう戻り方を知らなかった