メンヘラちゃんとヤンデレくん!?

翌朝。
依音は、学校を休んだ。
制服に手を伸ばしたまま、動けなかった。
スマホには欠席連絡。
理由は体調不良。
嘘じゃない。
胸が、ずっと痛い。
布団に潜り込んでも、
怜の声が頭から離れなかった。
同じ頃、怜は教室にいた。
依音の席は、空いている。
「……来てない」
小さく呟く。
不安は、ない。
むしろ――
「正解」
依音が人前に出ない。
それだけで、世界は静かになる。
そこへ。
「怜くん♡」
甘い声。
例の女の子が、嬉しそうに近づいてきた。
「依音ちゃん、休みなんだってね」
「大丈夫だよ」
にこっと笑う。
「ちゃんと、排除したから」
その言葉を聞いた瞬間、
怜の表情が、ほんのわずかに変わった。
「……そう」
声は、穏やか。
「君が、やったんだ」
彼女は安心したようにうなずく。
「うん!」
「別れろって言ったし、周りにも話したし」
「もう依音ちゃん、怜くんに近づけないよ」
「だからさ」
一歩、距離を詰める。
「私と付き合お?」
怜は、静かに微笑んだ。
「ありがとう」
丁寧に。
「理由が、はっきりした」
彼女の笑顔が、止まる。
「君が、依音を傷つけた理由」
「勝手に触った理由」
「全部、理解できた」
目が、完全に冷える。
「排除した?」
「依音を?」
小さく息を吐く。
「勘違いしてる」
「依音はね」
「俺が守る存在」
「誰かが処理していいものじゃない」
声は低く、静か。
「付き合うとか、ありえない」
「君は――」
言葉を選ぶ。
「余計なことをしただけ」
それ以上、彼女を見なかった。
放課後。
怜は、依音の家の前に立っていた。
手には、薬と、依音が好きだった飲み物。
インターホンを押す前に、呟く。
「大丈夫」
「邪魔な声は、全部消えた」
ドアの向こうを見つめて、優しく。
「依音は」
「もう、逃げなくていい」
「俺が、迎えに来たから」
依音は、まだ知らない。
何も言わずに逃げたあの日から、
世界が静かに“選別”されていることを。
そして、
この関係が終わっていないどころか――
始まり直していることを。