メンヘラちゃんとヤンデレくん!?

怜の腕の中で、依音は小さく息を整えていた。
「……怜くん」
呼ぶと、すぐに反応が返ってくる。
「なに?」
即答。
その速さが、少しだけ怖くて、少しだけ安心する。
「さっきの人……もう、来ないよね」
不安が滲んだ声。
怜は一瞬だけ考える素振りをしてから、
依音の髪を撫でた。
「来ないよ」
断言。
「来させない」
その言い方が、
まるで“未来を選別する”みたいで。
「……どうして、そんなに言い切れるの?」
そう聞くと、怜は困ったように笑った。
「依音が、俺のそばにいるから」
「それだけで、十分でしょ?」
意味が分からないのに、
なぜか納得してしまいそうになる。
「依音はさ」
怜は、指先で依音の手をなぞる。
「不安になると、顔に出る」
「声も、指も、全部」
逃げられないほど、よく見ている。
「だから」
「俺が一番近くにいればいい」
依音の額に、自分の額を軽く当てる。
「俺が見てれば、安心するでしょ」
――その通りだった。
「……うん」
答えた瞬間、
怜の目が、静かに満ちる。
「ほら」
「ちゃんと分かってる」
抱きしめる腕は、
さっきよりも穏やか。
でも、緩まない。
「無理に縛らなくても」
「依音は、自分から戻ってくる」
囁きは、確信。
「迷っても」
「不安になっても」
「最後に選ぶのは、俺」
それを“支配”だと、
怜は呼ばない。
“信頼”だと、信じている。
依音は怜の胸に顔を埋めた。
「……怜くんのとこ、落ち着く」
小さな、本音。
怜の喉が、静かに鳴る。
「知ってる」
「だから、ここにいさせてる」
夕暮れの校舎裏。
世界はまだ広いはずなのに。
依音の視界には、
怜しか映らなかった。
そして怜は、
それを“当然”だと思っている。