怜は、依音の生活リズムをほぼ把握している。
何時に家を出て、
何時にスマホを見るか。
眠る前、どんな言葉を欲しがるか。
全部。
だから、連絡が遅れるとすぐ分かる。
――今、考えすぎてる。
怜はスマホを手に取った。
『大丈夫だよ』
それだけ送る。
少しして、既読がつく。
返事はない。
……ほら。
怜は息を吐いた。
言葉が多いと、不安を煽る。
少なすぎても、依音は壊れる。
ちょうどいい距離。
ちょうどいい量。
それを選べるのは、自分だけだ。
『ちゃんと、俺がいるでしょ』
送信。
すぐに返ってくる。
『うん』
たったニ文字。
でも、それで十分だった。
依音は、もう理解している。
自分がそばにいれば、
何も考えなくていいということを。
翌日。
怜は、依音の周囲を見る。
最近、話しかけてくる人間が減った。
当然だ。
依音自身が、距離を取っている。
――よくできてる。
でも、まだ足りない。
完全じゃない。
昼休み、依音が一人でいるのを確認してから、席を立つ。
「依音」
声をかけると、彼女はすぐ顔を上げた。
安心した表情。
その顔を見るたびに、
正しいことをしていると確信できる。
「今日、放課後」
少し間を置いてから言う。
「寄り道しないで、まっすぐ帰ろう」
命令じゃない。
提案の形。
依音は、少しだけ迷ってから頷いた。
……迷う必要なんて、ないのに。
でも、焦らない。
依音は時間をかけて、自分の形に馴染ませるものだ。
帰り道。
怜は、繋いだ手を離さない。
誰かとすれ違うたび、
依音の指に少しだけ力を込める。
「……怜くん?」
「なに?」
「近い」
小さな声。
怜は、微笑んだ。
「離れる理由、ないでしょ」
それ以上、依音は何も言わなかった。
家の前まで送り、
ドアが閉まるのを見届ける。
鍵がかかる音。
カーテンが揺れて、閉じられる。
完璧。
怜は、その場を離れた。
依音は安全だ。
自分の管理下にある。
それが、一番大事なこと。
夜。
『おやすみ』
依音から先に来た。
珍しい。
……成長してる。
『おやすみ』
『明日も同じでいよう』
そう返すと、すぐ既読がついた。
返事はない。
それでいい。
怜は、画面を見つめながら思う。
依音は、
自分がいないと不安で、
自分がいると満たされる。
それ以外の世界は、
少しずつ、必要なくなっていく。
壊れてる?
違う。
これは、完成だ。
怜は静かに目を閉じた。
――この形を、誰にも壊させない。
依音の心が、
自分だけで満たされている限り。
何時に家を出て、
何時にスマホを見るか。
眠る前、どんな言葉を欲しがるか。
全部。
だから、連絡が遅れるとすぐ分かる。
――今、考えすぎてる。
怜はスマホを手に取った。
『大丈夫だよ』
それだけ送る。
少しして、既読がつく。
返事はない。
……ほら。
怜は息を吐いた。
言葉が多いと、不安を煽る。
少なすぎても、依音は壊れる。
ちょうどいい距離。
ちょうどいい量。
それを選べるのは、自分だけだ。
『ちゃんと、俺がいるでしょ』
送信。
すぐに返ってくる。
『うん』
たったニ文字。
でも、それで十分だった。
依音は、もう理解している。
自分がそばにいれば、
何も考えなくていいということを。
翌日。
怜は、依音の周囲を見る。
最近、話しかけてくる人間が減った。
当然だ。
依音自身が、距離を取っている。
――よくできてる。
でも、まだ足りない。
完全じゃない。
昼休み、依音が一人でいるのを確認してから、席を立つ。
「依音」
声をかけると、彼女はすぐ顔を上げた。
安心した表情。
その顔を見るたびに、
正しいことをしていると確信できる。
「今日、放課後」
少し間を置いてから言う。
「寄り道しないで、まっすぐ帰ろう」
命令じゃない。
提案の形。
依音は、少しだけ迷ってから頷いた。
……迷う必要なんて、ないのに。
でも、焦らない。
依音は時間をかけて、自分の形に馴染ませるものだ。
帰り道。
怜は、繋いだ手を離さない。
誰かとすれ違うたび、
依音の指に少しだけ力を込める。
「……怜くん?」
「なに?」
「近い」
小さな声。
怜は、微笑んだ。
「離れる理由、ないでしょ」
それ以上、依音は何も言わなかった。
家の前まで送り、
ドアが閉まるのを見届ける。
鍵がかかる音。
カーテンが揺れて、閉じられる。
完璧。
怜は、その場を離れた。
依音は安全だ。
自分の管理下にある。
それが、一番大事なこと。
夜。
『おやすみ』
依音から先に来た。
珍しい。
……成長してる。
『おやすみ』
『明日も同じでいよう』
そう返すと、すぐ既読がついた。
返事はない。
それでいい。
怜は、画面を見つめながら思う。
依音は、
自分がいないと不安で、
自分がいると満たされる。
それ以外の世界は、
少しずつ、必要なくなっていく。
壊れてる?
違う。
これは、完成だ。
怜は静かに目を閉じた。
――この形を、誰にも壊させない。
依音の心が、
自分だけで満たされている限り。
