獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 ヴィルフリートはイラッとした口調で言った。そうだった。彼は気が短い。私だって、それは知っている。

 先んじて……知っているのだ。

「私さえ、居なかったら……ヴィルフリートはただ、聖女フロレンティーナを好きになるだけだっただろうし、それで良かったはずなの。私があのまま……大人しく国外追放されていたら……それならっ」

 涙が流れた。ぽたりぽたりと音を立てて、地面に落ちていく。私はどうして、もっと早く諦めなかったんだろう。

 もっと早く諦めていれば、誰も巻き込まずに済んだのに。

「お前、いい加減にしろよ! 俺があんな良くわからない女を、好きになるわけがないだろ!」

 怒りの表情になったヴィルフリートは吠えるように言った。

 ……違う。それは、フロレンティーナよりも先に、私のことを知ったからだ。

 フロレンティーナはヒーローたちの前では、完璧な聖女であるはず。

「……いいえ。私は知っているの。私が居なければ、ヴィルフリートはフロレンティーナのことを好きになるのよ。最終的には振られてしまうけれど、貴方は彼女のことが好きだったの!」