獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 温室で使う如雨露(じょうろ)はさすが高級品で、霧雨のような細かな水になって出て来る。如雨露を揺らしながら水を掛けると、なんとなく薬草たちが喜んでいるように思えるのだ。

「……皆、良いこだね。元気に育ってね。いろんな人の、怪我を治してあげてね」

 嬉しそうに見えるのは、気のせいだとわかっているんだけど……根拠なんてあるわけがなくて、すべてはなんとなく……なんだけど。

「ブライス。おはよう」

 私は彼の声が温室の奥から不意に聞こえたことに対して、もう驚かなかった。

 謎の文官オルランドは、この温室でよく昼寝をしている。起きて出て行く時に私が居ても、彼が急いでいると、ここに居ることが当然のように挨拶のみでいなくなってしまうこともあったからだ。

 人けのない温室を格好のサボり場所だと思っていることは、間違いなかった。それにオルランドはヴィルフリートの知り合いでもあるので、怪しい人物であれば彼が既に排除しているはずだ。

「あ……お仕事、大丈夫ですか?」

 今は仕事始めの午前中で、大抵の人は、一番に忙しい時間帯だ。