獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 暗い部屋の中で逆光に浮かぶ彼の影を見て、安心感を得て目を閉じた。

 その日は、珍しく暗い闇が押し迫るような悪夢は見なかった。


◇◆◇


 朝起きれば当然のことだけれど、ヴィルフリートは居なかった。

 あれは、夢だったのかもしれないと思った。私にとても都合の良い夢。ようやく、理想の理解者が現れるという願いが叶った夢。

 そこに、机に置き手紙があった『無理をしないように』。文字は男性らしく角張っていた。名前はないけれど、それはヴィルフリートのものだろう。

「……夢じゃなかった」

 夢じゃなかった。ヴィルフリートは私の置かれている状況をわかってくれて、虎視眈々と狙うフロレンティーナにはきっと騙されない。

 だって、彼は私を殺そうとしたフロレンティーナを、その目で目撃したのだから。

 ほっとして胸に手を当てた。わからない。ここ数年間、わかってもらえない事が日常だったから、まだまだ現実感がない。

 ううん。本来ならば、私の処遇について彼が王族に掛け合ってくれたと聞いた時に、彼を信じるべきだったのかもしれない。