獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 城の広い廊下の真ん中でにっこりと微笑む、金髪碧眼の美少女は聖女フロレンティーナ……まるで天使のようだけれど。

 ……私には、まるで悪魔に思える人。美しい容姿を持つフロレンティーナの背後に見える昏くてどす黒い何かは、世界で私にしか見えないのかもしれない。

「フロレンティーナ……」

 私は周囲を見回した。やっぱり……誰も居ない。

 そうなのだ。私と彼女が二人になる時、必ず誰も居なくなる。

 ああ。怖い……どうして、忘れられていたんだろう?

 フレデリックから婚約破棄を宣言されて、やっと逃げられたと思ったのに。

「……まだ、元気そうで無事で良かったわ。フレデリックから話を聞くまでは、私はすぐに騙されて外国にでも売られているのかと思ったの。こうして無事な姿を見ることが出来て、とっても嬉しいわ。ふふふ」

「っ……」

 愛らしい笑みを浮かべて語られる心配の言葉だけど、私にはそれに裏があることを良く知っている。

 コツコツコツと可愛らしい足音が近付き、私へと近付いた。