獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 あれだって、いきなりフロレンティーナが階段から落ちそうになっていたから、咄嗟に助けようと手を伸ばしただけだったのに……まんまと、フロレンティーナの罠に嵌まってしまったのだ。

 だから、ヴィルフリート・レイドが国外追放の罰を受け路頭に迷いそうな私を好意で助けてくれたことなんて、彼にとってはきっとどうでも良いことなのだ。

 私が城内で保護されていて、庭師の真似事もしているらしい。だから、好奇心で見に来た……そんなところではないだろうか。

 人は自分の信じたいことしか……信じない。信じてくれない。

 私の言葉なんて、フレデリックにとっては『信じるに値しないこと』なのだ。

 ……そうだった。久しぶりだから、なんだか忘れてしまっていた。フレデリックには何を言っても、何をしても、もう無駄だもの。

 ここは何も言わずに黙って、やり過ごすしかない。いつも通りに。

「おい。ブライス。いつものように、だんまりを決め込むのか? もし、言いたいことがあるならば、言えば良い……僕に捨てられて、レイド公爵家の嫡男をすぐに捕まえるなど……どんなふしだらな手を使ったのか」