獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 ここは、日陰で育つ薬草たちだから、日光は元よりある程度遮蔽されているし、温度は一定だから、確かに隠れてサボって昼寝するには絶好の穴場(スポット)なのかもしれない。

「怒ってはいません……いませんけど、すごく驚きました」

 本当に驚いてしまった。例えるならば自室で数時間過ごしていて、誰も居ないと思って居たベッドの下から男性が出て来たくらいの大きな衝撃。

 私だってこの温室は自室ではなくて誰が居てもおかしくはない職場ではあると頭で理解してはいるけれど、ここまで数時間は彼はずーっとここで眠っていたことになるのだ。

「どうして、女の子が庭師をしているの? 君はもしかして……とある貴族の娘だよね? どこかで、見たことがあるような気がするよ」

 暗に私が元ルブラン公爵令嬢ブライスであることを指摘されて、心の中は強い焦りを感じた。

「ちちちち……違います! 遠縁で似ているだけでしょう。私は平民です。口利き所に庭師募集の張り紙を見て応募しただけで、貴族などではありません!」

「へー……そうなんだ。ごめんごめん。貴族だと思ったのは、僕の勘違いだったようだね?」