獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 それほどは広くない温室の中での仕事とは言え、庭師の仕事には変わりないので、私は指示された通りにスコップを片手に土を盛ったり、枯れかけた葉を間引きしたりしていた。

 庭師の仕事は簡単なものだけれど、時間が掛かる。あれこれしていると、すぐに夕方が来てしまう。

「……はーっ、誰とも話さなかった……」

 水やりをするために如雨露を手にしている私は、大きく息をついて独り言を口にした。

 それでも、これまでに比べて気持ちは凄く楽だった。心が軽い。だって、誰にも会わなくて良いし、誰からも白い目で見られることもない。

 悲しいことにありもしない悪事をでっち上げられて、お前のせいだと後ろ指を指されることには慣れてしまった。

 これまで、私は聖女フロレンティーナからフレデリックの好感度を上げる……ただ、そのためだけに使われる存在だったのだから。

「もう、不必要な人間関係に関わりたくない……薬草を育ててお金がもらえるのなら、それだけで生きて行きたい……皆も良い感じに育ってね……わかった?」

 私は前世知識の中に植物は話し掛けると良く育つと知っていたので、たまに薬草に話し掛けていた。