獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢


 私を残して彼らが健気なフロレンティーナをいち早く邸へと連れ帰ろうとする姿を、ぼんやりと見つめていた。

 一人湖の近くに残されて、これは一体いつまで続くのだろうと思った。

 物語の中でフレデリックの婚約者、悪役令嬢ブライスは中盤に婚約破棄されて退場する。そして、またいくつかの難所を越えて『彼女』は大団円のハッピーエンドへと向かう。

 婚約破棄されたブライスは殺人未遂の罪で、国外追放になるはずだ。

 早く……早く、そうして欲しい。この立場から解放されたい。

 水辺の岩に座りそう思っていたら、パラパラと音を立てて雨が降り出した。いけない。早く帰らないと……そう思い、私は森の中へと進んだ。

 レイド公爵家は立地的に神殿に近い非常に広い敷地を持っていて、方向を間違えれば森の深部へと行ってしまう。

「……っ!!」

 慌てていた私は邸への方向を間違い、巨大熊と対峙することになった。

 一瞬、叫ぼうかと思ったけれど、グルルと低い音でうめき、私の身長の三倍ほどもある巨大熊を前に恐怖で動きは固まってしまった。