獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 そうなんだ……ここに、私は住んで良いんだ。

 だって、彼と会ってからあまりにも展開が早すぎるし、このまま王都に残れるなんて思ってもみなかった。

 私はこのまま隣国に逃れて、現代知識を駆使して、どうにかして幸せになるの……そう思っていた。

 この異世界は、中世欧州に生活様式が良く似ている。

 今この世界に住む彼らが思いつかぬような画期的な商売だって私には思いつくことが出来る。偉大なる先人たちの前世知識を駆使して提案し、儲けられることがだって可能かもしれないのだ。

 そうよ。お金を儲けたら……もう恋愛なんて一生せずに、一人で生きて一人で死ぬつもりだった。

「……びっくりした」

 ぽつりと口にした言葉は、一人しかいない部屋にやけに響いた。

 ヴィルフリートはこの物語に出て来るヒーローの一人なので、女性たちが夢見るような素敵な男性であることは間違いない。

 けれど、何故か私はヴィルフリートが助けてくれようとするなんて、まったく思っていなかったのだ。

 せめて一人で生きられるまではと、こんな風に部屋を与えてまで助けてくれようとするなんて。

 ……わからない。もう誰も信じられなかったからと言えば、そうなのかもしれない。

 少なくともフレデリックは、私がいくら訴えても聞く耳を持たず『彼女』の言葉しか、信じなかったのだから。