獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 私はなんだか、その時、やけにヴィルフリートとの距離が近いと思った。

 これまでの彼は、私と紳士的な距離を保っていたから、余計にそう思えたのかもしれない。

「あの……近くないです?」

 危険を感じた私は如雨露を薬草の棚に置いて、彼が迫る距離を保とうと二歩下がった。

「嫌か?」

 それを追い掛けるようにヴィルフリートは二歩進み出たので、私の背中は温室の壁際まで追い詰められ居た。

 嫌か嫌ではないかと問われれば……嫌ではない。だって、ヴィルフリートは私を助けてくれた人……大事な人だし、素敵な男性ではある。

 嫌では、ない……けど。

「……あの、ヴィルフリート、その」

 壁際に追い詰められて逃げようとしたら、壁に手を付いて囲まれた……逃げられなくなった。

 空気中に漂う甘い雰囲気に、息がしづらい。もしかして、これって、もしかして。

「なんだ。気がついてないのか。おいおい。ブライス。俺がいくら親切な男でも、好きな女以外に、ここまでするわけがないだろう」

 すっ……好きな、好きな女? わわわ、私のことで合ってます? そ、そんなこと、今まで何も。

「え。あの……」