獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

「……もう庭師見習いは、しなくて良いだろ」

 温室で水やりをしていると、おそらくは鍛錬後で白い練習着のままのヴィルフリートがやって来て揶揄うように言った。

「こうしていると、心が落ち着くんです。普通の貴族令嬢って、意外と大変なんですよ」

 私はルブラン公爵家へと戻り、いろいろあって二週間。現在は問題なく、貴族令嬢としての日々を過ごしている。

 これまでは、フレデリックとフロレンティーナの二人から嫌がらせを耐えることに、全精力を注いで来た。

 あの二人から解放されたら万事上手くいく……なんてことはなく、貴族令嬢としての社交は人間関係が入り組んでいて難しく、これまでには出来てなかったことを全力で過ごす日々。

 楽しいと言えば楽しいけれど、やっぱり傷つくこともあったりで、悪者がいなくなっても、お伽噺のお決まり文句のように、幸せに暮らしました……なんてことには、ならなかった。

 ……もし、どこかに逃げても、同じように何か大変なことが待っている。だから、私はきっと正しい判断が出来たんだと思う。

「普通の貴族令嬢は、嫌なのか?」

「嫌ではないですけど……」