獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 ヴィルフリートはそう言うと、メロールの首を何回か叩いた。

 私は何のことだろうと思った。けれど、目の前にある景色は何も変わらない。

「……ヴィルフリート?」

 私は不思議になって、背後に居るヴィルフリートを振り返った。

「これは、少し時間が要るんだよ。前を見てみろ。お待ちかね……だ」

 ヴィルフリートは前を見るように促したので、私は不思議に思いつつ視線を戻した。

 そして、あまりの美しさに息をのんだ。

「わ。すごい……」

 そこにあったのは、月光にきらめく虹。夜に掛かる虹なんて、生まれて初めて見た。

「メロールは水と風を操ることが出来るから、空気中に水蒸気を増やして無風状態を作れるんだ。月の光が強いと、こうして虹を架けることが出来る」

 凄い。そんなことが出来るメロールが凄いし、これを私に見せてくれたヴィルフリートも凄い。

 私は今まで、狭い世界で生きていたと思う。フロレンティーナが支配して操作出来るのは、フレデリックとその周囲だけ。

 フロレンティーナには、決して敵わないと……そう思い込んでいただけなのかもしれない。

 世界はこんなにも広いのに。