獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 それは、楽な選択なのかもしれない。だって、今あるすべての心配事を解決しなくて良い。全部捨ててしまえば、それで良いのだから。

 けど、私は……。

「……私、何も悪いことをしていないので、逃げたくないです。それに……私の無実の罪を晴らそうとしてくれているというお父様とお母様にも早く会いたいです」

 私だって……少しでも後ろぐらいところがあったなら、これは言えなかったかもしれない。

 けれど、いくらフロレンティーナに追い詰められても、私は彼女に反則行為なんてしたことはない。

 胸を張って言える。私は誰に対しても、恥ずかしいことをしていないって。

 もちろん、自分自身にも。

「……そうか。ブライスがそう思うなら、そうしようぜ」

「はい……ありがとうございます」

 ヴィルフリートはさっき、揶揄うような口調だった。けれど、もしかしたら『逃げたい』と言っても、同じように言ってくれたのではないだろうか。

 そう思った。なんだか、不思議だけど……彼なら、きっと、そう言ってくれただろうと確信が持てるのだ。

「雲もないし……綺麗な満月だ。頑張った褒美に、良いもの見せてやるよ」