獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 恥ずかしさのあまり、いきなり立ちあがろうとして、私の体はぐらりと傾いだ。そこを、ヴィルフリートは危なげもなく腰に手を回して支えてくれた。

「おいおい。そそっかしいな」

「……ごめんなさい!」

 慌てた私は、彼の体に両手を当てて離れた。

 ……あ。なんだか、嫌がってるみたいになった……?

 ヴィルフリートは何も言わない。なんだか変な空気になってしまった。私はなんとか話題を捻り出そうと頭を回転させた。

「あの……ヴィルフリート、その、これからどうするの?」

 私から見たところ、ヴィルフリートは温室での庭師見習いの仕事を手伝ってくれるだけで、何かを準備している気配もない。

 だから、不思議だった。罠を仕掛けたフロレンティーナにやり返してやると、そう言っていたはずなのに。

「まあ……この薬草と一緒だ。もっとも適切な収穫の時期を待っている。こういうのは、時期(タイミング)が大事なんだよ。ブライス。向こうがぐうの音も出ないような、完璧なタイミングで復讐を果たす。俺は待てる男だ。焦ってせっかくのチャンスを逃したら、ただの馬鹿だしな」

 ニヤリと悪く笑ったヴィルフリートに、何も知らない私は首を傾げるしかなかった。