獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢

 それなのに、いまは何も言わずに、焚き木を炎に時折投げ入れているだけだ。

「その……助けてくれて、ありがとうございます……」

 勇気を出してお礼を言ったけれど、言葉尻は小さくなってしまった。これは、彼に対して私が悪いことをしたということを、自分が一番にわかっているからだった。

「……ああ」

 ヴィルフリートは素っ気なくそう言って、目線を焚き火に戻した。いつもの彼らしくない振る舞いに、私はやっぱり気まずい思いをした。

 口も利きたくないほどに怒らせてしまったのだろうか、たとえそうだとしても、それは仕方ないと思う。

 だって、ヴィルフリートは私を助けようとしてくれたというだけで……それなのに、良くわからない事を言われてしまった、ただの被害者だ。

 それに、今思うと前世の記憶を持っていない人からすれば、私さえ居なければ違う誰かを好きになっていたはずだったなんて言わたら、それは恐怖以外何ものでもないような気がする。

 え。何言ってるの……そう思ってしまうはずだ。私がもし……彼の立場だったとしたら。

「どうして……何も言わないの?」