今日は少し早く家を出た。
なぜだろう。
たしか、いつもは走る通学路をゆっくり歩いてみたいと思ったから、だったような気がする。
休日にはお昼の2時まで爆睡をかまし、平日もHRのチャイムと同時に学校に到着する私が、
朝6時に目覚ましをかけてきちんと1回目のアラームで起きたのだ。
ほめていただきたい。自分で思い立ったことなんだけど。
「はーーっ」
あれ?息白くならない。
肌寒いから絶対白くなると思ったのに。
これじゃただ思いっきり息を吐きだした人じゃないか。吸わねば。
「すぅうううーーん?」
空気吸ってたら公園だぁー!
こんなとこに公園とかあったんだ。
うそだろ、3年前にこっちに引っ越してからここ通学路なんだけど。
ずっと気づかなかったってこと?
普段どんだけ急いでたんだろ。
現在時刻は...7時10分か。
学校が開くのは8時でHRが8時30からだから、まだまだだな。
よし、ちょっとここでゆっくりしよー。
「わぁ~!」
菜の花がいっぱい咲いてる!桜も!
肌寒いけど季節は春だねぇ。
おっベンチじゃん。
「よっこいしょっと」
え、いま「よっこいしょ」って言った?私。
やば、まだぴちぴちの女子高生なはずなのにもう老化始まってんのか...
おぎゃあおぎゃあの時から比べたらだいぶ老けたかな。
考えてたらだいぶ悲しくなる。
「あ」
ちょうちょだ!
菜の花にいっぱい群がっとる!
きれーー。
菜の花にちょうちょかぁ。あれだな。あの歌思い出すな。
「ちょうちょ ちょうちょ 菜の葉にとまれ
菜の葉に飽いたら 桜にとまれ」
「よー。ノリノリだな」
ん?誰だ、私の穏やかなひとときを乱すやつは。
「おっ!武じゃん。おはよ」
「はよー」
そうこいつ、武と書いてたけしと読むこいつだ。
「すげぇな。こんなに早く起きてんの?
いっつも遅刻するのに?」
「今日はたまたま。あとチャイムと一緒に教室に入るのは遅刻とは言わん」
「えーー」
「えーとは何だこの野郎」
武とは腐れ縁で、高校に入ってからずっとクラスが一緒だ。
...なんでこいつナチュラルに隣座ってきてんだ?
「おい、いつ私が隣に座ることを許可した」
「こわ、女王様かよ」
「ああ、今この公園は私の王国だ」
「ぜったい独裁国家だな」
失礼すぎん?こいつ。
「あーもういいや。武、なんかちょうだい」
「なんも持ってないよ今」
「チッ。使えねぇ」
「泣きそう」
「じゃーなんか買いに行こ。まだ時間あるでしょ」
ヨーグルトだけしか食べてこなかったからか、もう腹が減ってしまった。
「はな女王は人使いが悪いようで...」とか言いながら、ちゃんとと付き合ってくれる武。
それ言わなかったらいいんだけど、まぁ感謝感謝だぜ。
公園から一番近いコンビニに二人で向かう。
「はな、金持ってんの?」
「持ってるに決まってる。持ってなかったらなんか買いに行こうとか言うわけないじゃん」
「はなのことだから、俺の金でーとか言いそうだなと思って」
「そんなくそみたいなやつだと思われていたのか。ショック」
着いた。
めっちゃ近いな。2回会話のキャッチボールしただけなんですけど。
_ウィーン
「え、優しい誰かが私のためにドアを開けてくれた?
まぁ私女王様だから当たり前か」
「自動ドアな」
なんか言ってるみたいだけど老化が進んでる私には聞こえますぇーん。
*
おにぎり、クリームパン、から揚げを買って店を出る。
「ふんふんふんふーん」
「何糞糞言ってんの?」
武もなんか買って出てきた。
「よーし公園かえって食べるぞ!
あ、武今何時?」
「んー、730」
「伝え方終わってんな。理解できるからよし」
7時30分か。まだまだだな。
早起きは三文の徳と言いますが、こんなに有意義な朝を過ごせるとは。
ありがとう早起きしようと思い立った過去の私。
*
てくてく20歩ほど歩いて公園に着。
ベンチにもう一度座り、袋からさっき買ったおにぎりを取り出す。
もぐもぐもぐもぐ
あれ、武もおにぎり食べてるや。
「もぐもぐ、武もおにぎり買ってたんだ」
「もぐもぐもぐ、ちょっとお腹減ってたからおにぎり一個だけ」
「具は」
「鮭」
「神。一口くれ」
「え」
え、「え」って言われた。嫌なのかな。
「嫌ならいい」
「いや...。お前ほんとに女か?」
「殴られたい?」
どうしたんだ武。
あ、そうか。あげるだけだったら自分のおにぎりだけ一口分減っちゃうもんな。
「ごめんて武。私の納豆ねぎマヨ一口あげるから」
「そーいうことではなく。てかいらねぇよそんな変なやつ」
じゃあどーいうことだ?
あと私の一番のお気に入りを変なやつとかいうな。
「くれないのか...?」
「ッツ!あげる!あげるから」
「やったーいただき!」
パク
う~んやっぱ鮭も捨てがたいな。うまい。
「ありがと武。ほら、代わりに私のも一口あげるから」
「...」
えーどした。
あっいらないって言ってたなそういえば。すまんすまん。
「...武?」
「...」
なんで黙ってんだこいつ。
ハッ!なんか顔赤い?
武!熱か!熱なのか!急じゃね!?
「武!熱出たのか!今日学校やすむか!」
「うるせぇ」
「心配してやってんのになんだその言い草」
「熱じゃねぇ」
「顔赤いぞ?」
「太陽が熱いんだ」
ほーん、そうか。
なら知らね。
もぐもぐもぐもぐ
バリッ
もぐもぐもぐもぐ
「...」
ねぇなんで何も喋らないんだろうねこの人。
私もう買ったもの全部食べ終わっちゃったよ。
「ねーねー武。もう学校いこーよ」
「...ん」
なんか急に無愛想になったな。
まー太陽のせいらしいからしゃーない。
「よっこいしょ!
すぅうう!はぁ~!」
ベンチから立ち上がり、深呼吸
現在時刻、何とまだ8時!
ここから学校までは走れば5分で行ける距離。
今日はゆっくり歩いて向かいましょ。
カバン持ってっと。
あっ、深呼吸したら武忘れてた。
「武ー!早く食べ終われ!」
「いま食べ終わったー」
よーし、今日も学校へ出発だ!!!
