アンコールはリビングで

「そういえば、さっき何読んでたの?」

「あぁ、これ?」

彼がテーブルの脇に置いた本を指差した。
今撮影しているドラマの原作小説だ。

「ドラマの脚本はもう全部読んだけど、原作も面白くてさ。気になって先まで読んじゃった」

「へぇ、どんな話なの?」

「んーとな……」

彼は少し考えてから、あらすじを話してくれた。

「主人公は、AIとしか会話しない合理主義のIT社長と、昭和歌謡しか聴かないアナログな古書店員の女の子なんだけど。
最初はマッチングアプリの誤操作で出会って、最悪の印象から始まるんだよ。
でも、社長が開発した『嘘を見抜くAI』が、その女の子の嘘…本当は寂しいとか、だけは見抜けなくてバグる……みたいな。
令和っぽいデジタルな設定なんだけど、中身はコテコテのすれ違い純愛モノ」

「え、何それ面白そう!」

「だろ? 結構泣けるんだよ、後半」

「いいなぁ、私も読みたくなってきた」

「読み終わったら貸すよ。あ、でも本棚に1巻あるから、そっちから読めば?」