身代わりの仮婚約者になったら、銀髪王子に人生丸ごと買い占められた件

(……どうしよう。本当に寝ちゃった……)

膝の上に乗る、一条様の頭。

想像していたよりもずっと重くて、でも、驚くほど温かい。
さっきまで私をリムジンで連れ去って「体で払え」なんて言っていた暴君とは、とても思えなかった。

私は息を殺して、彼の顔をじっと見つめる。学園で女子たちが黄色い声を上げるのも納得の、彫刻のように整った顔立ち。長い睫毛が影を落とし、スッと通った鼻筋が美しい。

(……まつ毛、長いなぁ……)

つい見惚れてしまい、無意識に彼の手入れされた銀髪にそっと触れようとした――その時。

「……俺の許可なく、触るつもりか?」

「ひゃっ!?」

寝たはずの一条様が、片目だけをうっすらと開けて、ニヤリと口角を上げた。

(……起きてたの!?)

「あ、あの! 寝たんじゃなかったんですか!?」

「……落ち着くと言っただろう。君の膝が、想像以上に柔らかくて……。それに、いい匂いがして、眠るのがもったいなくなった。」

彼はそう言うと、私の膝に顔を埋め直すようにして、ぐいっと私の腰を強く引き寄せた。
あまりの近さに、頭が真っ白になる。

「い、一条様……近いです……っ!」

「……様はやめろと言ったはずだ。……蓮、と呼べ。」

「そんなの無理です! 雲の上の存在の人を呼び捨てなんて……」

「……なら、お仕置きが必要だな」