誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

 そこに映し出されていたのは、すらりとした長身に、黒のスーツを完璧に着こなす男。
 
 高く通った鼻筋。シャープな輪郭。ライトに照らされた横顔は、まるで一枚のポスターのように完成されていて、思わず息を呑む。

 これだけ整っていれば、俳優でなくてもモデルとして十分通用するだろう。

「一条玲央、ほんとかっこいいよね」

 テレビを見ている私に気づいた美咲が、嬉しそうに身を乗り出す。

「なんていうか……見とれちゃう。演技も上手いし、この間の映画もほんと泣けた」

「賞、総なめだもんね。日本で知らない人いないんじゃない?」

「そうそう。私、密かに推してるんだよね」

 画面の中で、一条玲央は控えめに笑いながら、トロフィーを受け取っている。

『スタッフと、応援してくださる皆さんのおかげです』

 落ち着いた声。驕りのない言葉。
 完璧な容姿に、誠実な振る舞い。

 外に出れば巨大広告。雑誌を開けば表紙。
 化粧品のCM、映画の主演、ドラマの視聴率王。

 ――日本で彼を知らない人なんて、きっといない。

 こんなにも完璧な男を、私はふたりと知らない。

 ふと、胸の奥がざわつく。

 こんな人が、誰かを本気で愛するとしたら。隣に立つのは、どんな女性なんだろう。