誰もが愛する国民的スターは私だけを溺愛する

「俺、もっと甘えてくれる人が好きなんだ」

 別れ話をされたあと、彼は最後にそう言って去っていった。

『俺、結衣の一生懸命なところ好きだな』

 あの頃は、確かにそう言ってくれていたのに――。

「はぁぁぁぁ……」

 大きく息を吐いた。少しでも気持ちが軽くなると思ったのに、胸の痛みはそのままだ。

「そんな男、別れて正解だよ。そいつのことなんか忘れて次行こ、次!」

 そう言って明るく笑うのは、同じ事務所で働く同期の奥田美咲(おくだみさき)だ。
 必死に元気づけようとしてくれているのが、心に染みる。

 私、白石結衣(しらいしゆい)は27歳、芸能マネージャーとして働いている。
 1週間前に3年も付き合っていた彼氏に浮気された。それだけならまだしも、振られたのは浮気相手ではなく――3年も付き合っていた、この私だった。

『お前、仕事ばっかだったじゃん』

 別れた日の会話が蘇る。

 (浮気した自分が悪いのに、私のせいみたいに言われた!!)

「3年もあの男に費やしたのがバカみたい!」

 怒りと悔しさに押され、思わず拳を握りしめる。胸の奥で、熱いものがぐるぐると渦巻いていた。

「私たちの3年って、もう貴重なのわかってないよね」

 私は美咲の言葉に、「うんうん」と大きく頷いた。