やらかしてごめんなさい。
眉を下げて反省の意を示しながら、後ろにいるはずの不良さんを振り返った。物凄く呆れた顔をされてる可能性を考えて萎縮した態度を取ったが──
「……まじか、お前」
「勝手に喧嘩奪ってごめんなさい!」
「ふっ、すげえな」
目元に掛る金色の髪を揺らしながら、不良さんは笑った。
気の抜けたような、あまやかな表情で。
「……」
魅入って呆然としてる私を他所に、彼はふわりと舞う髪を撫でて丸っこい頭に手を置く。
二度、三度。
ぽふん、ぽふん。
頭上で優しい手がバウンドしたかと思うと、彼は淀みなく言い放った。
「かっけーな、お前」
言葉が鼓膜を震わせた、刹那。
流れ星が目の前を通過したような、幻のオアシスを発見したような、そんな感覚が身を震わせた。
「えっ、え、も、もういっかい、言って……」
「は?」
「そ、それ……! もう一回!」
慌てて、興奮して、詰め寄る。
困惑した顔で怪訝そうに眉を寄せる不良さんに、私は満面の笑みで口にした。
「私、ずっと〝かっこいい〟って、言われたかったの……!」
幾度となく言われてきた〝可愛い〟より、心底渇望していた〝かっこいい〟の一言。
私は、可愛いよりも綺麗よりも優しいね、よりも、似合わないと笑われるほどの〝かっこいい〟が欲しかった。
呆気に取られてる不良の彼は、何度か瞬きを零す。無愛想に見せ掛けた優しい眼で私を捉えた彼は、薄い唇で次の言葉を紡ごうとしたが、
「君たち、何してる!」
後ろから聞こえた声、警官服。
お互いに、よーいどん、と合図をしたように地面を蹴って走った。
「あははっ! 今日、最高!」
「くっそ、変な女」
でこぼこな影がふたつ。
夜の街に吸い込まれて消えていった。
fin.



