そう思案していると、不意に声がこちらを向く。
「あれ~、女連れ?」
軽薄でねっとりとした、不協和音のような声に彼は舌打ちをした。
ああ、気づかれちゃった。頭の中でそんな言葉が零れる。
人通りの多い繁華街で安っぽい蛍光色に晒されてる私たちを案じる人はいない。ここはそういう場だ。
運良く警官が見回りしてることもなく、拳と拳の争いが起きるのは時間の問題。
「その女、可愛い顔してんじゃん」
不協和音の声が、不快な言葉を紡ぐ。
ぷつん。
それが耳に届いた瞬間、明確に何が弾けた。
強固な糸がちぎれた私は止まれない。一方的にファイトのゴングを鳴らして地面を蹴った。
優しい金色の背中から飛び出し、制止する声も無視して足を振りかざす。
「邪魔ですっ! キーック!」
「ぐっ、うあ……!」
そのままくるりと回転し、勢いを落とさずに相手の顎を狙って回し蹴りを食らわせた。
綺麗に決まった一撃。
地面に沈んだ相手を確認してアドレナリンが吹き出るまま、残りの汚い不良を薙ぎ倒した私は、翻るスカートの裾を撫でつけた。
「……」
沈黙が辺りを漂う。
さすがに目立ちすぎたのか、通行人からの視線が気になった。
「不良さん。一旦、ここから逃げた方がいいかもしれません……」



