陽貴side
車の窓に、街のネオンが流れていく
エンジンの低い振動と、静かな夜
やっと終わった撮影に、体を預けるようにシートにもたれた
「はぁ……」
長い一日だった
でも――
不思議と、嫌な疲れじゃない
ポケットからスマホを取り出す
画面を開くと、
既読はついていない自分のメッセージ
「撮影、やっと終わった」
……まだ仕事中か
時間を見れば、深夜2時過ぎ
紗凪ちゃんが夜勤って言ってた日だ
そりゃそうだよな、と小さく息を吐く
分かってる
そういう仕事だ
命と向き合ってる場所で、
スマホなんて見てる余裕ないのも
頭ではちゃんと理解してるのに――
「……はぁ」
もう一度、小さく息が漏れた
画面を閉じようとして、ふと、指が止まる
……会いてぇな
ぽつりと浮かぶ本音
自分でも、少し驚く
こんなふうに、誰かを“待つ”なんて、久しぶりだった
今までなら、会いたければ会えばいいし、連絡したければすればいい
それで済んでたのに
紗凪ちゃんは、違う
簡単じゃない
時間も合わないし、呼べば来るような相手でもない
むしろ――だから、か
思い通りにならないから、余計に、気になる
余計に、欲しくなる
「……厄介だな」
苦笑が漏れる
その時、画面がふっと光った
「私は今から休憩ですおつかれさま」
…やっときた
思わず口元が緩む
たったそれだけのメッセージなのに、
さっきまでの物足りなさが、一瞬で消えていく
「……ほんと単純」
自分で呟いて、少し笑った
すぐに返信を打つ
「今帰ってる紗凪ちゃんも無理しないでね」
送信
ほんとは、「会いたい」とか、「声聞きたい」とか、いくらでも言えた
でも――
今はまだ、それは言わない
紗凪ちゃんはきっと、そういう言葉に慣れてない
簡単に言ったら、きっと逃げる
だから、
少しずつ
ゆっくり
逃げ道を塞ぎながら、でも気づかせないように
「……ほんと、面倒くさいことしてんな俺」
くすっと笑う
でも嫌じゃない
むしろ――
この距離も、この時間も、
全部含めて楽しいと思ってる自分がいる
車が信号で止まる
窓の外に映る、自分の顔
どこか、余裕のない表情
「……まぁいいか」
小さく呟く
どうせ、逃がすつもりなんて最初からない
会えない時間が増えたって、関係ない
むしろ――
会えない分だけ、次に会った時、どうなるか分かってる
「……覚悟しとけよ」
ぽつりと、誰にともなく呟いた
その言葉は、夜の車内に静かに溶けていく
でも確実に、自分の中で何かが深くなっているのを感じていた
――次に会う時は、もう少し踏み込む
逃げられないくらいに
ゆっくり、でも確実に
紗凪ちゃんを、自分の方へ引き寄せるために
車の窓に、街のネオンが流れていく
エンジンの低い振動と、静かな夜
やっと終わった撮影に、体を預けるようにシートにもたれた
「はぁ……」
長い一日だった
でも――
不思議と、嫌な疲れじゃない
ポケットからスマホを取り出す
画面を開くと、
既読はついていない自分のメッセージ
「撮影、やっと終わった」
……まだ仕事中か
時間を見れば、深夜2時過ぎ
紗凪ちゃんが夜勤って言ってた日だ
そりゃそうだよな、と小さく息を吐く
分かってる
そういう仕事だ
命と向き合ってる場所で、
スマホなんて見てる余裕ないのも
頭ではちゃんと理解してるのに――
「……はぁ」
もう一度、小さく息が漏れた
画面を閉じようとして、ふと、指が止まる
……会いてぇな
ぽつりと浮かぶ本音
自分でも、少し驚く
こんなふうに、誰かを“待つ”なんて、久しぶりだった
今までなら、会いたければ会えばいいし、連絡したければすればいい
それで済んでたのに
紗凪ちゃんは、違う
簡単じゃない
時間も合わないし、呼べば来るような相手でもない
むしろ――だから、か
思い通りにならないから、余計に、気になる
余計に、欲しくなる
「……厄介だな」
苦笑が漏れる
その時、画面がふっと光った
「私は今から休憩ですおつかれさま」
…やっときた
思わず口元が緩む
たったそれだけのメッセージなのに、
さっきまでの物足りなさが、一瞬で消えていく
「……ほんと単純」
自分で呟いて、少し笑った
すぐに返信を打つ
「今帰ってる紗凪ちゃんも無理しないでね」
送信
ほんとは、「会いたい」とか、「声聞きたい」とか、いくらでも言えた
でも――
今はまだ、それは言わない
紗凪ちゃんはきっと、そういう言葉に慣れてない
簡単に言ったら、きっと逃げる
だから、
少しずつ
ゆっくり
逃げ道を塞ぎながら、でも気づかせないように
「……ほんと、面倒くさいことしてんな俺」
くすっと笑う
でも嫌じゃない
むしろ――
この距離も、この時間も、
全部含めて楽しいと思ってる自分がいる
車が信号で止まる
窓の外に映る、自分の顔
どこか、余裕のない表情
「……まぁいいか」
小さく呟く
どうせ、逃がすつもりなんて最初からない
会えない時間が増えたって、関係ない
むしろ――
会えない分だけ、次に会った時、どうなるか分かってる
「……覚悟しとけよ」
ぽつりと、誰にともなく呟いた
その言葉は、夜の車内に静かに溶けていく
でも確実に、自分の中で何かが深くなっているのを感じていた
――次に会う時は、もう少し踏み込む
逃げられないくらいに
ゆっくり、でも確実に
紗凪ちゃんを、自分の方へ引き寄せるために
