トップアイドルは白衣の天使に恋をする

ピクッ、と陽貴くんの動きが一瞬止まる

でも次の瞬間には、まだ距離を詰めようとする気配があって――

「ピンポン、ピンポーン!」

インターホンが立て続けに鳴った

「陽貴っくん……なってる……よ……?」

やっとのことで、それだけ絞り出す

「ちっ……」

小さく舌打ちする

彼はゆっくりと体を起こし、しぶしぶと言った様子で玄関の方へ向かう

「陽貴さーん!いるっすよねー!?開けてくださいよー!」

インターホン越しに響く明るい声

その声を聞いた瞬間、私はピタッと固まった

――この声、聞いたことある

黒騎士のメンバーの誰かだ

やばい、やばいやばい……!

さっきまでの空気が一気に現実に引き戻される

心臓はまだ暴れているのに、頭だけが冷たく冴えていく

「はぁ〜……めんど」

陽貴くんがぼそっと呟いた声に、思わず目を瞬かせた

え……今の……何?

さっきまでの“完璧な王子様”はどこにいったの

いや、むしろ今の方が“素”すぎる

ギャップが強すぎて頭が追いつかない

「紗凪ちゃん、こっち来て」

ぐい、と手を取られた

連れてこられたのは寝室

「……っ、あの……?」

状況が分からず顔を上げると、彼は少しだけ申し訳なさそうに笑った

「ごめん、メンバー来た」

その一言に、現実が一気に戻る

「できるだけ早く帰すから、少しだけここに隠れてて」

「隠れてて……?」

心臓がまた変な音を立てる

「この部屋には誰も入ってこないから、大丈夫」

そう言って、安心させるみたいに優しく笑った

その笑顔がずるい

「……はい」

小さく頷くと、

「うん、いい子」

ふわっと髪を撫でられた

その瞬間、全身の熱が一気に上がる

……これ、反則でしょ……

パタ、と扉が閉まる

静けさと一緒に、彼の香りだけが残る

薄暗い部屋

ふわっと落ち着く香り

遠くから聞こえる楽しそうな声

――安心した瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた

今日……濃すぎる……

ヘリも飛んで、雨に濡れて、ディナーして、膝の上で、そして今

情報量が多すぎる

「……もう、いいや」

ぽつりと呟いて、私はベッドに身を預けた

あたたかくて、やけに安心する空気に包まれる

瞼が、重い

ちょっとだけ……休憩……

そう思ったところで、意識はゆっくりと落ちていった