トップアイドルは白衣の天使に恋をする


優朔side

空気でわかった。

何かがあったと。

「先生VFです!」

若い看護師の子が先生を呼びにくる

俺の教育担当である縁川先生はすぐに駆け出した

張り詰めた空気。

慌ただしく動くスタッフ。

鳴り続けるアラーム音。

視線を向けた先。

ベッド上では一ノ瀬紗凪ちゃんが胸骨圧迫をしていた。

迷いのないテンポ。

乱れないフォーム。

額に汗を浮かべながらも、その目だけは驚くほど冷静だった。

「アドレナリン入ります」

「次のABG出ます」

「先生、血圧まだ低いです」

医師と次々やり取りを重ねながら、周囲へ指示も飛ばしていく。

……すごい。

現場に圧倒される。

実際、横にいる若い看護師の子は完全に飲まれてる。

それが普通だよな、とも思う。

なのに彼女は違う。

焦りを周囲に伝染させない。

むしろ、紗凪ちゃんがいることで場が落ち着いてる。

動きに一切無駄がない。

医師も紗凪ちゃんには説明を省いて短い言葉だけを投げていた。

それで全部通じてる。

……あぁ。

これ。

陽貴と奏がやられてる理由、わかったかもしれん。

俺小さく苦笑した。

もちろん顔は可愛い。

雰囲気も柔らかい。

けど、そんな表面的なもんじゃない。

あの二人が惹かれてるのは、多分――

“現場の紗凪ちゃん”だ。

命がかかってる場面で、こんな風に立てる人間は強い。

しかも、強いだけじゃない。

ちゃんと周りを見てる。

さっき固まってた若い子対しても、責めるどころか声を掛けながら動かしてた。

あれ、簡単そうでできない。

みんな自分のことで精一杯になるから。

「……洞調律戻りました」 

その声に、ICUの空気が少し緩む。

紗凪ちゃんはすぐに血圧測定へ移りながら、医師と次の管理を確認している。

完全に紗凪ちゃん中心に動いていた

その姿を見ながら思う。

……そりゃ、心掴まれるわ。

陽貴なんか分かりやすすぎるし。

奏もあれ絶対かなりきてる。

男って、結局こういう瞬間に弱い。

普段ふわっと笑ってる子が、現場では誰より冷静に立ってる。

そんなギャップ、反則だ。