トップアイドルは白衣の天使に恋をする

紗凪side

1件目のヘリ出動を終えて、ICUに戻る。

「一ノ瀬、ヘリ患者どうだった?」

師長さんに声をかけられる。

「接触時にはすでにショック状態だったので挿管して、
今オペに入っています」

「そっかそっか、おつかれさま」

軽く頷いたあと——

「あ、そうだ。朝言ってたシャドーイングの件なんだけど」

あ……忘れてた

「この子、お願いね」

そう言って隣に立っている人物を見る。



…あ、この人

緑色の髪。

整った顔立ち。

ヘリ要請が入ったとき、ちらっと見えた人。

やっぱり、あの時の——

「名前は桜庭奏くん!」

ですよね。

「桜庭奏です」

そう言って、にこっと笑う。



一瞬、思考が止まる。

破壊力すご……

顔、小さい。
目、大きい。
まつげ、長い。

マスク越しでも分かる完成度。

これが……アイドル……

梓が“顔面国宝級”って騒いでた意味、今なら分かる。

マスク外したら危険なやつだこれ。

「5日間、しっかり勉強させてもらいます。よろしくです」

柔らかい口調。

愛嬌もある。

完璧か?

「一ノ瀬紗凪です。こちらこそよろしくお願いします」

とりあえず、にこっとしておく。

無愛想はダメ。梓に怒られる

その瞬間——

「一ノ瀬さん、かわいっすね」

…はい?

身体が一瞬で固まる。

え、なに今の…

初対面でこれ?

さすがアイドル……!

一般人にも気を遣える教育が徹底されている。

すごい。プロだ。

「……あはは、私は大丈夫ですので……」

(お気遣いなく、という意味で)

「??」

桜庭さんは首を傾げている。

あれ?伝わってない?

その時——

「あ、言い忘れてたけど」

師長さんがさらっと口を挟む。

「看護師としては申し分なし。
女としては攻略困難、激ムズ案件よこの子」

…攻略?

どういう意味だろう。

そう思っている間に、

「じゃ、よろしくねー」

師長さんは颯爽と去っていった。

説明不足すぎませんか……

「ほ〜……なるほど」

隣で桜庭さんが、なぜか納得している。

え、分かったの?

私だけ置いていかれている気がする。

……まぁいいや。

気を取り直して。

「桜庭さん、で大丈夫ですか?」

一応確認。

「今日は私、フライト担当なので、出動要請があれば離れることになります。
1人の時間もできてしまうと思うので……すみません」

ちゃんと伝えておかないと。

放置する形になるのは、さすがに申し訳ない。

すると——

「全然いいですよ」

即答。

「むしろ、その“現場”見れるならラッキーっす」

にこっと笑う。

…余裕あるなぁ

「それに」

少しだけ、目線がこちらに寄る。

「一ノ瀬さんの仕事、ちゃんと見てみたいんで」

…え

一瞬、言葉に詰まる。

そんな大したものじゃないんだけどな……

でもその目は、冗談じゃなくて。

まっすぐで。

少しだけ——

…見られてる

そんな感覚がした。