トップアイドルは白衣の天使に恋をする

「ハッハ、そんな堅苦しくならんで大丈夫じゃよ」

院長は豪快に笑いながら手を振る。

「わしは院長室におるから、何かあれば言うてくださいな。
病院のことは秘書の池田が教えるんで安心してええよ」

それだけ言うと——

「ほなな〜」

本当にそれだけ残して、ひらひらと手を振りながら去っていった。

自由すぎない?

病院のトップって、もっとこう……威厳ある感じかと思ってた。

「ゴホン……」

ひとつ咳払い。

「それでは皆様、こちらへどうぞ」

さっきとは打って変わって、きっちりした空気。

あ、こっちはちゃんとしてる人だ

秘書の池田さんに案内され、廊下を進んでいく。

白くて清潔な空間。

消毒の匂い。

すれ違う医療スタッフの速い足取り。

なんか、空気違うな

自然と背筋が伸びる。

「こちらが皆様にお使いいただくお部屋になります」

案内された部屋に入ると——

「え、なにこれすご…」

思わず声が出た。

ベッド、シャワー、簡易キッチン。

ほぼホテル。

病院ってこんなとこあるの?

「皆様にはこちらでお着替えいただきます」

池田さんが淡々と説明する。

「救急担当の者を呼びますので、準備が整い次第、現場へご案内いたします」

一礼して、そのまま部屋を出ていった。

パタン。

ドアが閉まる。

「……なんかすげぇな」

蒼依がぽつりと呟く。

「とりあえず、着替えるぞ」

陽貴さんの一言で、全員が動き出す。

用意されていたのは、紺色のスクラブ。

これが、医療者の服か

手に取ると、思ったよりもしっかりした生地。

袖を通すと——

…ちょっとテンション上がるかも

鏡に映る自分は、いつもと少し違って見えた。

「おぉ〜!やばくねこれ!」

案の定、蒼依が大はしゃぎしている。

「一気に医療者って感じじゃん!」

鏡の前でポーズを決めている。

分かりやすいなぁ

でも、気持ちはちょっと分かる。

これで3割増しくらいには見えるかもね

なんて、軽く考える。

「奏、それ似合ってる」

優朔がさらっと言う。

「そっちこそ。普通に医者いけそうじゃん」

落ち着いた雰囲気。

ああ、この人はハマるな。

役とか関係なく、もうそれっぽい。

そして——

ちらっと、もうひとりを見る。

陽貴さん。

無言でスクラブの袖を整えている。

やっぱりどこか、落ち着かない空気。

普段なら、もっと余裕あるのに。


そんなに気になる?


あの人のこと。


心の中で、くすっと笑う。


まぁ、分かるけど


あの夜の光景は、確かに印象に残るものだった。


ちょうどその時——

コンコン。

ノックの音が響いた。