トップアイドルは白衣の天使に恋をする

私の言葉を聞いた瞬間。

陽貴くんが、ふっと目を細めた。

その顔があまりにも嬉しそうで。

なんだかこっちまで照れてしまう。

「……やばい」

「なにが?」

「今日の紗凪、甘すぎる」

「普通じゃない?」

「普通でそれだから困ってる」

そう言いながら。

またぎゅっと抱きついてくる。

本当に今日はずっとくっついてる。

「陽貴くん」

「んー?」

「動けない」

「動かなくていいよ」

全然離れる気がない。

肩へ顔を埋めたまま、私の腰へ腕を回している。

大型犬みたい。

思わず笑ってしまう。

「なに笑ってるの」

「いや、甘えすぎだなって」

すると陽貴くんが少しだけ顔を上げた。

「だって最近ずっと会えなかったじゃん」

その声が思ったより小さくて。

少しだけ寂しそうで。

胸がきゅっとなる。

「仕事終わって帰っても紗凪いないし」

「電話しても数分だし」

「会えても疲れてる顔見て終わりとか多かったし」

ぽつりぽつりと零れる本音。

たぶんずっと我慢してた。

私も同じだったから分かる。

「だから今日、ずっと幸せ」

そう言って笑う顔が優しくて。

私は自然と陽貴くんの頭を撫でた。

「……私も会いたかったよ」

その瞬間。

陽貴くんがぴたりと固まる。

「あのさ」

「紗凪ってたまに爆弾落とすよね」

「え?」

「無自覚なの怖い」

意味が分からず首を傾げると。

陽貴くんが困ったみたいに笑った。

「可愛すぎて理性飛びそう」

「っ……」

またそういうこと言う。

顔が熱くなる。

すると陽貴くんが楽しそうに笑いながら、私の頬を指でつついた。

「赤くなった」

「うるさい」

「かわいい」

「うるさいっ」

言い返すと。

さらに嬉しそうな顔をされる。

ほんとずるい。

そのままソファでじゃれ合っていると。

陽貴くんが不意に私の肩へ額を乗せた。

「……このまま時間止まればいいのに」

ぽつり。

静かな声。

その言葉に胸がじんわりする。

「また忙しくなるもんね」

「うん」

撮影。

ライブ準備。

雑誌。

番組収録。

優朔さんの復帰タイミングもある。

私もヘリ当番や夜勤が続く。

また、簡単には会えなくなる。

だからこそ今この時間が愛しかった。

「でも」

陽貴くんがゆっくり顔を上げる。

「こうやって帰ってこれる場所あるだけで頑張れる」

真っ直ぐな目。

その視線に、胸が熱くなる。

私は小さく笑って。

「じゃあちゃんとご飯作って待ってないとね」

そう言うと。

陽貴くんがぱっと顔を明るくした。

「え、好き」

「単純」

「だって紗凪のご飯大好き」

そのまままた抱きつかれる。

「……もうほんと離れないね今日」

「今日は無理」

「断言した」

「紗凪不足深刻だったので」

真顔で言われて吹き出す。

すると。

陽貴くんが私を見ながら、少しだけ甘えるみたいに言った。

「ねぇ」

「今日はいっぱいくっついていい?」

その聞き方が可愛くて。

私は笑いながら頷いた。

「……しょうがないなぁ」

そう返した瞬間。

陽貴くんがすごく幸せそうに笑った。