トップアイドルは白衣の天使に恋をする

紗凪side

優朔さんの入院から3日。

状態は少しずつ落ち着いてきていた。

酸素投与量も減り、呼吸状態も改善傾向。

痛みはまだ強いけれど、それでも最初の日に比べればかなり表情は柔らかい。

梓からも夜中の様子を聞いていた。

「ちゃんと弱音吐けるようになってきた」

なんて言っていて。

私は思わず笑ってしまった。

そんな慌ただしい数日を過ごして。

ようやく今日。

陽貴くんとちゃんと会える時間ができた。

仕事終わり。

マンションのドアを開けた瞬間。

「紗凪」

低い声。

次の瞬間には、もう抱きしめられていた。

「っ……陽貴くん」

ぎゅうっと強く回される腕。

顔を埋めるみたいに肩へ額を押しつけられる。

「……やっと会えた」

掠れた声。

その声だけでこの人もずっと我慢してたんだって分かる。

「うん……」

私も自然と抱きしめ返した。

すると陽貴くんが少しだけ身体を離して、じっとこっちを見る。

「ちゃんと寝てる?」

「それ、私のセリフ」

「紗凪、絶対寝てない」

図星すぎて言葉に詰まる。

すると陽貴くんが小さく笑った。

「やっぱり」

そのまま優しく頭を撫でてくる。

「優朔のこと、かなり気張ってたでしょ」

「……まぁ」

「紗凪は責任感強いから」

全部見透かされてる。

私は小さく息を吐いて、陽貴くんの胸へ額を預けた。

その瞬間。

ふわっと力が抜ける。

安心した。

やっと会えた。

その実感がじわじわ込み上げてくる。

「優朔さん、だいぶ元気になってた」

「ほんと?」

「うん。今日なんか梓に怒られてた」

その瞬間。

陽貴くんが吹き出した。

「ははっ、なにそれ見たい」

「“痛い時は我慢しない”って」

「あー……言われてそう」

楽しそうに笑う。

その顔を見て、胸が少し軽くなる。

きっと陽貴くんも。

ずっと心配してた。

現場で事故を見て。

救急車に乗る優朔さんを見送って。

撮影も続いて。

平気なわけない。

「陽貴くん」

名前を呼ぶと。

「ん?」

優しい声。

「……お疲れさま」

そう言った瞬間。

陽貴くんが少し目を細めた。

「それ、今言われるとやばい」

「え?」

「会いたかったの我慢してたから」

その声が甘くて。

一気に心臓がうるさくなる。

次の瞬間また引き寄せられる。

「ほんと会いたかった」

耳元で落とされる声。

それだけで胸がぎゅっとなる。

「……私も」

小さく返すと。

陽貴くんがぴたりと止まった。

「今の反則」

「またそれ……」

「だって可愛すぎる」

そう言いながら。

そっと頬にキスが落ちる。

一回だけじゃなく何度も。

優しく触れるみたいに。

「陽貴くん……」

「んー?」

「苦しい」

「俺も」

即答だった。

思わず笑ってしまう。

すると陽貴くんが私を見ながら、少しだけ困ったように笑った。

「なんかさ」

「こういう時、紗凪がいると帰ってきた感じする」

その言葉に。

胸がじんわり熱くなる。

私はそっと陽貴くんの服を掴んだ。

「……おかえり」

小さくそう言うと。

陽貴くんが一瞬黙る。

そして次の瞬間。

ぎゅうっと、さっきより強く抱きしめられた。

「やばい」

「離したくない」

本気の声。

その体温が心地よくて。

気づけば私も、陽貴くんの背中へ腕を回していた。

優朔さんのことは心配。

仕事も忙しい。

でも今だけは。

好きな人の腕の中で安心していられることが、ただ嬉しかった。