CTを終えて戻ってきた優朔は、そのまま救急処置室へ移された。
幸い、頭部出血はなし。
でも、右鎖骨骨折、肋骨にヒビ。
さらに、倒れてきた機材で裂傷した右肩からはまだじわじわと出血が続いていた。
処置用のガウン越しでも分かる赤色。
呼吸するたび、傷が引っ張られるのか、優朔の眉がわずかに寄る。
「ガーゼ追加します」
そう言いながら傷部を確認する。
かなり痛いはずなのに、本人は騒がない。
むしろ静かすぎるくらいだった。
「まだ痛み強いですか?」
聞くと、優朔は少し苦笑する。
「さっきよりは少し…マシです」
…嘘ね。
右肩は少し動かすだけでも顔色が変わる。
呼吸も浅い。無理に平静を装っているのが分かった。
「今から縫合入るので、あんまり動かないでくださいね」
「はい」
ドクターが縫合に入る。
縫合中も
「すみません、動きづらいですよね」
とか。
「処置しにくくないですか?」
とか。
いやだから。患者側が気遣わなくていいのよ。
思わず呆れてしまった。
でもその空気の柔らかさに、救われてるスタッフがいるのも分かった。
ピリつきやすい救急の空気が、少しだけ和らぐ。
それを本人はたぶん無意識でやってる。
「痛かったら言ってください」
そう声をかけながら縫合介助を続ける。
すると優朔が少しだけこちらを見た。
「……看護師さんってすごいですね」
「急にどうしました?」
「血とか見ても全然顔変わらない」
「見慣れてるので」
「いや普通に尊敬します」
その言い方があまりにも自然で。
変に口説いてる感じもなくて。
なんだか調子が狂う。
「一ノ瀬さんもこんな感じで働いてるんですか?」
紗凪の名前が出て、少しだけ目を瞬く。
「まぁ。あの子はもっと怖いです」
「え、怖いの?」
「患者さん動いたら普通に怒ります」
その瞬間。
優朔が小さく笑った。
でも笑った拍子に肩へ響いたのか、
「っ……」
すぐに顔をしかめる。
「あーもう、だから笑わないでください」
思わずそう言うと。
優朔が痛みに耐えながらも、少し楽しそうに言った。
「……看護師さん、結構厳しい」
「患者さんが言うこと聞かないからですよ」
そう返しながら。
私はもう一度、優朔を見る。
痛いはずなのに。
苦しいはずなのに。
周りばかり気にして。
無理して笑って。
……ほんと、変な人。
幸い、頭部出血はなし。
でも、右鎖骨骨折、肋骨にヒビ。
さらに、倒れてきた機材で裂傷した右肩からはまだじわじわと出血が続いていた。
処置用のガウン越しでも分かる赤色。
呼吸するたび、傷が引っ張られるのか、優朔の眉がわずかに寄る。
「ガーゼ追加します」
そう言いながら傷部を確認する。
かなり痛いはずなのに、本人は騒がない。
むしろ静かすぎるくらいだった。
「まだ痛み強いですか?」
聞くと、優朔は少し苦笑する。
「さっきよりは少し…マシです」
…嘘ね。
右肩は少し動かすだけでも顔色が変わる。
呼吸も浅い。無理に平静を装っているのが分かった。
「今から縫合入るので、あんまり動かないでくださいね」
「はい」
ドクターが縫合に入る。
縫合中も
「すみません、動きづらいですよね」
とか。
「処置しにくくないですか?」
とか。
いやだから。患者側が気遣わなくていいのよ。
思わず呆れてしまった。
でもその空気の柔らかさに、救われてるスタッフがいるのも分かった。
ピリつきやすい救急の空気が、少しだけ和らぐ。
それを本人はたぶん無意識でやってる。
「痛かったら言ってください」
そう声をかけながら縫合介助を続ける。
すると優朔が少しだけこちらを見た。
「……看護師さんってすごいですね」
「急にどうしました?」
「血とか見ても全然顔変わらない」
「見慣れてるので」
「いや普通に尊敬します」
その言い方があまりにも自然で。
変に口説いてる感じもなくて。
なんだか調子が狂う。
「一ノ瀬さんもこんな感じで働いてるんですか?」
紗凪の名前が出て、少しだけ目を瞬く。
「まぁ。あの子はもっと怖いです」
「え、怖いの?」
「患者さん動いたら普通に怒ります」
その瞬間。
優朔が小さく笑った。
でも笑った拍子に肩へ響いたのか、
「っ……」
すぐに顔をしかめる。
「あーもう、だから笑わないでください」
思わずそう言うと。
優朔が痛みに耐えながらも、少し楽しそうに言った。
「……看護師さん、結構厳しい」
「患者さんが言うこと聞かないからですよ」
そう返しながら。
私はもう一度、優朔を見る。
痛いはずなのに。
苦しいはずなのに。
周りばかり気にして。
無理して笑って。
……ほんと、変な人。
