梓side
救急外来は、今日も騒がしかった。
モニター音。
飛び交う指示。
救急隊の声。
慌ただしく動くスタッフたち。
その空気の中で、私はトリアージブースから中央処置室へ向かっていた。
「次、外傷入ります!」
救急隊からのホットライン。
「撮影現場で機材転倒。男性一名、胸部・右肩中心に打撲、頭部打撲あり。出血多量、意識清明、SpO2軽度低下——」
その説明を聞きながら必要物品を確認する。
外傷セット。
ルート。
酸素。
モニター。
頭はもう完全に仕事モード。
だからストレッチャーが入ってきた瞬間も
「黒騎士の優朔だ」
なんて感情はほとんどなかった。
「ベッド移します!」
救急隊と一緒に患者を移乗する。
その時、初めてちゃんと顔を見る。
……あぁ。
確かに優朔だ。
相変わらずほんっとに顔が整ってるわね。
テレビで見るより少し顔色が悪い。
右肩からかなり出血していてそれを庇うように呼吸している。
でも。
「ありがとうございます」
移乗された直後、最初に出た言葉がそれだった。
……律儀な人
そんなことを思いながらモニター装着を進める。
「血圧128/76、SpO2 93」
「酸素2L入れます」
「痛みどうですか?」
聞くと、優朔は少しだけ苦笑した。
「少し痛いです」
“すこし”の顔色じゃない。
明らかに痛みを堪えてる。
でも騒がない。
「右肩動かさないでくださいね」
「はい」
返事も素直。
その時。
処置介助に入っていた若手看護師の袖に血がついた。
「あっ、ごめんなさい!」
慌てた声。
すると。
優朔がすぐそっちを見る。
「すみません、服汚れてません?」
その言葉に、一瞬手が止まった。
……いや。
普通そこ気にする?
自分の方が絶対痛いだろうに。
実際、呼吸するたび眉間が寄ってる。
なのに先に他人を気にする。
「大丈夫です」
看護師が慌てて返すと、優朔は少し安心したみたいに息を吐いた。
その直後。
「CT先入ります」
医師の声。
ストレッチャーが動き始める。
すると優朔がぽつりと聞いた。
「……陽貴たち、大丈夫だったかな」
「え?」
「一緒に撮影してたんで」
少し呼吸が浅い。
でも。
聞いてる内容は自分のことじゃない。
「怪我してないといいんですけど」
その瞬間。
なんだか少しだけ驚いた。
芸能人ってもっとこう、自分中心な人多いと思ってた。
でもこの人は自分が運ばれてるのに、先に仲間の心配してる。
「そっちは大丈夫みたいですよ」
そう伝えると。
優朔は小さく「そっか……」と呟いた。
その表情が、少しだけ安心したみたいで。
……こういう人なんだ
自然とそう思った。
そこからの処置中もそうだった。
採血。
レントゲン。
CT説明。
全部きちんと受け答えする。
しかもスタッフが慌ただしく動いていると、
「急がせてすみません」
とか普通に言う。
いやだからなんで患者側が気遣うの。
思わず呆れそうになる。
でも同時に少しだけ気になった。
処置の合間。
鎮痛が入って少し落ち着いた優朔が、静かに目を閉じる。
その横顔を見ながら私はカルテ入力を続けた。
…綺麗な横顔。
救急外来は、今日も騒がしかった。
モニター音。
飛び交う指示。
救急隊の声。
慌ただしく動くスタッフたち。
その空気の中で、私はトリアージブースから中央処置室へ向かっていた。
「次、外傷入ります!」
救急隊からのホットライン。
「撮影現場で機材転倒。男性一名、胸部・右肩中心に打撲、頭部打撲あり。出血多量、意識清明、SpO2軽度低下——」
その説明を聞きながら必要物品を確認する。
外傷セット。
ルート。
酸素。
モニター。
頭はもう完全に仕事モード。
だからストレッチャーが入ってきた瞬間も
「黒騎士の優朔だ」
なんて感情はほとんどなかった。
「ベッド移します!」
救急隊と一緒に患者を移乗する。
その時、初めてちゃんと顔を見る。
……あぁ。
確かに優朔だ。
相変わらずほんっとに顔が整ってるわね。
テレビで見るより少し顔色が悪い。
右肩からかなり出血していてそれを庇うように呼吸している。
でも。
「ありがとうございます」
移乗された直後、最初に出た言葉がそれだった。
……律儀な人
そんなことを思いながらモニター装着を進める。
「血圧128/76、SpO2 93」
「酸素2L入れます」
「痛みどうですか?」
聞くと、優朔は少しだけ苦笑した。
「少し痛いです」
“すこし”の顔色じゃない。
明らかに痛みを堪えてる。
でも騒がない。
「右肩動かさないでくださいね」
「はい」
返事も素直。
その時。
処置介助に入っていた若手看護師の袖に血がついた。
「あっ、ごめんなさい!」
慌てた声。
すると。
優朔がすぐそっちを見る。
「すみません、服汚れてません?」
その言葉に、一瞬手が止まった。
……いや。
普通そこ気にする?
自分の方が絶対痛いだろうに。
実際、呼吸するたび眉間が寄ってる。
なのに先に他人を気にする。
「大丈夫です」
看護師が慌てて返すと、優朔は少し安心したみたいに息を吐いた。
その直後。
「CT先入ります」
医師の声。
ストレッチャーが動き始める。
すると優朔がぽつりと聞いた。
「……陽貴たち、大丈夫だったかな」
「え?」
「一緒に撮影してたんで」
少し呼吸が浅い。
でも。
聞いてる内容は自分のことじゃない。
「怪我してないといいんですけど」
その瞬間。
なんだか少しだけ驚いた。
芸能人ってもっとこう、自分中心な人多いと思ってた。
でもこの人は自分が運ばれてるのに、先に仲間の心配してる。
「そっちは大丈夫みたいですよ」
そう伝えると。
優朔は小さく「そっか……」と呟いた。
その表情が、少しだけ安心したみたいで。
……こういう人なんだ
自然とそう思った。
そこからの処置中もそうだった。
採血。
レントゲン。
CT説明。
全部きちんと受け答えする。
しかもスタッフが慌ただしく動いていると、
「急がせてすみません」
とか普通に言う。
いやだからなんで患者側が気遣うの。
思わず呆れそうになる。
でも同時に少しだけ気になった。
処置の合間。
鎮痛が入って少し落ち着いた優朔が、静かに目を閉じる。
その横顔を見ながら私はカルテ入力を続けた。
…綺麗な横顔。
