紗凪side
会えない時間が、少しずつ長くなっていた。
最初は、
“忙しい時期だから仕方ない”
って思えていたのに。
気づけばもう、最後に会ってから1ヶ月と少しが経っていた。
メッセージは毎日やりとりする。
『今から収録』
『終わった』
『寝る』
『紗凪は?』
短いやり取り。それだけでも嬉しい。
でもやっぱり会いたかった。
声じゃなくて。文字じゃなくて。
ちゃんと顔を見て、触れて、隣にいたかった。
「……会いたいなぁ」
誰もいない更衣室で、ぽつりと漏れる。
でもすぐ頭を振る。
だめだ。
今はお互い頑張る時。
陽貴くんなんて、朝から深夜まで毎日仕事してる。
ライブ準備。
雑誌。
ドラマ。
番組収録。
移動。
寝る時間だってまともに取れてないはず。
それなのに、毎日ちゃんと連絡をくれる。
疲れてるはずなのに、
“おやすみ”
だけは絶対送ってくれる。
だからこそ寂しいなんて言えなかった。
むしろ心配の方が大きい。
ちゃんと寝れてるのかな?
ご飯食べてるのかな?
倒れたりしてないかな?
考え始めると止まらない。
だから私は、仕事に没頭した。
患者対応。
入院。
出棟。
急変。
考える暇もないくらい動いている方が楽だった。
その日も日勤は慌ただしかった。
ようやく休憩に入って、スタッフルームの椅子に腰を下ろした瞬間。
ブーブー……
携帯が震える。
画面を見る。
『陽貴くん』
「……珍しい」
思わず呟く。
普段、仕事中に電話なんて滅多にしてこない。
胸が少しざわつきながら通話を取る。
「はい?」
『紗凪』
聞こえた声に、すぐ違和感を覚えた。
焦ってる。呼吸が浅い。
「……陽貴くん?」
すると。
『優朔が運ばれた』
一瞬。
頭が真っ白になった。
「……え?」
『撮影中に機材倒れてきて』
『下敷きになった』
その言葉に、一気に血の気が引く。
嫌な汗が背中を流れる。
「状態は?」
冷静に、そうきく、
『分かんない……』
陽貴くんの声が揺れている。
明らかに動揺していた。
『救急車乗ったけど、俺ら別撮影入ってて行けなくて……』
そこで一瞬、言葉が詰まる。
『……そっち運ばれたから…優朔を頼む』
その声が、苦しかった。
後ろで聞こえる。
ピーポーピーポー……
近づいてくる救急車のサイレン。
胸が嫌なほどざわつく。
「分かった」
できるだけ落ち着いた声を出す。
「陽貴くん、ちゃんと呼吸して」
『……うん』
「また連絡するね」
すると小さく返事が返ってきた。
『……頼む』
通話が切れる。
その瞬間、立ち上がっていた。
ICUへ向かう。
足が速くなる。
中央モニター。
救急外来の映像が映っている。
そこに視線を向けた瞬間。
少しだけ息を吐いた。
今日のトリアージナース。
梓だった。
それだけで、少し安心する。
状況判断が早い。
冷静。
絶対にパニックにならない。
モニター越しに見える梓は、すでに動いていた。
処置室の準備。
スタッフへの指示。
救急隊との連携。
迷いがない動き。さすがとしか言いようがない。
そして——
自動ドアが開く。
救急隊が患者を搬送してくる。
ストレッチャーの上。
血のついた服。
苦しそうな呼吸。
その顔を見た瞬間。
「……優朔さん」
間違いなかった。
一気に現場の空気が張り詰めるのがモニター越しでも伝わって来た
会えない時間が、少しずつ長くなっていた。
最初は、
“忙しい時期だから仕方ない”
って思えていたのに。
気づけばもう、最後に会ってから1ヶ月と少しが経っていた。
メッセージは毎日やりとりする。
『今から収録』
『終わった』
『寝る』
『紗凪は?』
短いやり取り。それだけでも嬉しい。
でもやっぱり会いたかった。
声じゃなくて。文字じゃなくて。
ちゃんと顔を見て、触れて、隣にいたかった。
「……会いたいなぁ」
誰もいない更衣室で、ぽつりと漏れる。
でもすぐ頭を振る。
だめだ。
今はお互い頑張る時。
陽貴くんなんて、朝から深夜まで毎日仕事してる。
ライブ準備。
雑誌。
ドラマ。
番組収録。
移動。
寝る時間だってまともに取れてないはず。
それなのに、毎日ちゃんと連絡をくれる。
疲れてるはずなのに、
“おやすみ”
だけは絶対送ってくれる。
だからこそ寂しいなんて言えなかった。
むしろ心配の方が大きい。
ちゃんと寝れてるのかな?
ご飯食べてるのかな?
倒れたりしてないかな?
考え始めると止まらない。
だから私は、仕事に没頭した。
患者対応。
入院。
出棟。
急変。
考える暇もないくらい動いている方が楽だった。
その日も日勤は慌ただしかった。
ようやく休憩に入って、スタッフルームの椅子に腰を下ろした瞬間。
ブーブー……
携帯が震える。
画面を見る。
『陽貴くん』
「……珍しい」
思わず呟く。
普段、仕事中に電話なんて滅多にしてこない。
胸が少しざわつきながら通話を取る。
「はい?」
『紗凪』
聞こえた声に、すぐ違和感を覚えた。
焦ってる。呼吸が浅い。
「……陽貴くん?」
すると。
『優朔が運ばれた』
一瞬。
頭が真っ白になった。
「……え?」
『撮影中に機材倒れてきて』
『下敷きになった』
その言葉に、一気に血の気が引く。
嫌な汗が背中を流れる。
「状態は?」
冷静に、そうきく、
『分かんない……』
陽貴くんの声が揺れている。
明らかに動揺していた。
『救急車乗ったけど、俺ら別撮影入ってて行けなくて……』
そこで一瞬、言葉が詰まる。
『……そっち運ばれたから…優朔を頼む』
その声が、苦しかった。
後ろで聞こえる。
ピーポーピーポー……
近づいてくる救急車のサイレン。
胸が嫌なほどざわつく。
「分かった」
できるだけ落ち着いた声を出す。
「陽貴くん、ちゃんと呼吸して」
『……うん』
「また連絡するね」
すると小さく返事が返ってきた。
『……頼む』
通話が切れる。
その瞬間、立ち上がっていた。
ICUへ向かう。
足が速くなる。
中央モニター。
救急外来の映像が映っている。
そこに視線を向けた瞬間。
少しだけ息を吐いた。
今日のトリアージナース。
梓だった。
それだけで、少し安心する。
状況判断が早い。
冷静。
絶対にパニックにならない。
モニター越しに見える梓は、すでに動いていた。
処置室の準備。
スタッフへの指示。
救急隊との連携。
迷いがない動き。さすがとしか言いようがない。
そして——
自動ドアが開く。
救急隊が患者を搬送してくる。
ストレッチャーの上。
血のついた服。
苦しそうな呼吸。
その顔を見た瞬間。
「……優朔さん」
間違いなかった。
一気に現場の空気が張り詰めるのがモニター越しでも伝わって来た
