トップアイドルは白衣の天使に恋をする

打ち上げが終わったのは、もう日付が変わりそうな時間だった。

会場の外に出ると、夜の空気が少しだけひんやりしていて、さっきまでの熱気とのギャップに一気に現実へ引き戻される。

「はぁ……終わったね」

小さく息を吐くと、隣で陽貴くんが頷いた。

「長かったな」

その声も少しだけ疲れているのに、どこか満足そうだった。

「でも楽しかった」

「うん」

自然と歩き出す。

タクシーに乗ると、静かな車内に切り替わった瞬間、急に眠気が押し寄せてくる。

窓の外の街灯がゆっくり流れていくのをぼんやり見ていると、肩に重みが乗った。

「……紗凪」

「ん……?」

見ると、陽貴くんがこちらに少し寄りかかっている。

「おつかれさま」

「陽貴くんも…」

そう返すと、少しだけ笑われた。

「俺はずっと紗凪見てただけ」

軽いやりとりなのに、妙に落ち着く。

気づけば、そのまま肩にもたれて目を閉じていた。

——

車が止まる。

「着いたよ」

その声でゆっくり目を開けると、いつもの建物が見えた。

陽貴くんの家。

鍵を開けて中に入ると、静かで、温かい空気が迎えてくれる。

「ただいま」

「おかえり」

そのやりとりが、もう自然になっていた。

リビングの明かりをつけると、一気に安心感が広がる。

「疲れた?」

陽貴くんに聞かれて、小さく頷く。

「ちょっとだけ」

「ちょっとだけ?」

「ほんとは結構」

そう言うと、すぐに笑われた。

「正直でよろしい」

ソファに座ると、隣にすぐ陽貴くんも座ってくる。

距離が近い。

当たり前みたいに近い。

「……終わったんだな、本当に」

ぽつりと陽貴くんが言う。

「うん」

少し間があって。

「でもさ」

私を見る。

「まだ続くけどな」

その言葉に、自然と笑ってしまう。

「なにそれ」

「人生」

「スケール大き」

軽く笑い合っていると、ふいに陽貴くんの腕が伸びてきて、そっと肩を抱かれる。

抵抗する理由もなく、そのまま寄りかかる。