トップアイドルは白衣の天使に恋をする

会場のざわめきが少し落ち着いたところで、優朔さんがグラスを置いてこちらを見た。

「そして一ノ瀬紗凪さん!」

少し明るい声で呼ばれる。

「はい」

自然と姿勢が正しくなる。

優朔さんはにっこり笑った。

「最後にもう一回、ちゃんと言わせてください」

その言葉に、周りの空気も少し静かになる。

「今回の現場で、医療監修っていう枠を超えて、現場そのものを成立させてくれてた」

少しだけ間を置いて。

「本当に、ありがとうございました」

その一言で——

ぱっと拍手が起きた。

「おおおお!」

「紗凪ちゃーん!!」

「ありがとうー!!」

一気に会場が温かくなる。

胸の奥がじんわり熱くなって、思わず頭を下げた。

「……こちらこそ、本当にありがとうございました」

そう言うと、さらに拍手が大きくなる。

その中で、黒騎士メンバーが顔を見合わせる。

奏くんが「よし」と小さく頷いた。

そして。

優朔さんが一歩前に出る。

「あとね」

少しだけ意味深に笑う。

「これは俺たちからの“お礼”」

そう言って、ポケットから封筒を取り出した。

「え?」

差し出されたそれを受け取ると、中にはチケットのようなものが入っている。

「これって……」

蒼依くんがニヤッとする。

「実はさ」

「まだ正式発表前なんだけど」

奏くんが続ける。

「黒騎士、全国ツアー決定しましたー!」

「えっ」

思わず固まる。

会場からも「え!?」「マジで!?」と驚きの声。

優朔さんが笑いながら頷いた。

「で、そのプレミアムチケット」

「関係者用の特別席」

「紗凪ちゃんに」

一瞬、言葉が出ない。

「え……私が、ですか?」

「当たり前でしょ」

奏くんが即答する。

「一番現場支えてくれた人だし」

蒼依くんも笑う。

「むしろ来ないと困るやつ」

優朔さんが優しく微笑む。

「お礼です」

その一言が、すとんと胸に落ちる。

気づけば、少しだけ目が熱くなっていた。

「ペアチケットだからお友達と来てね」

「……ありがとうございます」

そう言うと、また大きな拍手が起きた。

その中で、隣を見ると。

陽貴くんが静かに笑っていた。

「よかったな」

その一言が、やけに優しくて。

私はそっとチケットを握りしめた。

この現場で出会ったものは、もうただの“仕事”じゃない。

ちゃんと、形になって残っていく。