トップアイドルは白衣の天使に恋をする

打ち上げ会場は、最初から最後までずっと騒がしかった。

長いテーブルにはスタッフもキャストも入り混じって座っていて、乾杯の声が何度も響く。

「はいはい!改めて『ドクターズ〜救命最前線〜』完走おめでとう!!」

蒼依くんの掛け声で、また一斉にグラスが上がる。

「かんぱーい!!」

一気に場が温まって、笑い声が広がった。

料理もどんどん運ばれてくるのに、誰もちゃんと落ち着いて食べていない。

それくらい、話したいことと笑いたいことが多すぎた。

「いやほんとさ、あのICUシーン毎回命削ってたよね」

「分かる。心拍数上がるのこっちなんだけど」

「一ノ瀬さんいなかったら破綻してた説ある」

そんな声があちこちから飛ぶ。

私はその中心にいながら、少しだけ不思議な気持ちで周りを見ていた。

もう終わったんだな、って。

その時。

「遅れてすみません!」

扉が開いて、少し息を切らせながら入ってきた人がいた。

「林くん!」

みんなの視線が一斉に向く。

林くんは少し緊張したように頭を下げた。

「途中参加すみません!」

「フライトナース研修の準備でどうしても抜けられなくて……」

その言葉に、テーブルが一瞬しんとする。

でもすぐに。

「林くんもフライトナースになるの?!」

「すご!!」

「やるねー!」

一気に拍手が起きた。

林くんは慌てて手を振る。

「いやいや!まだ全然です!」

その様子を見て、私は自然と笑ってしまう。

すると林くんがこちらに気づいて、少し真面目な顔になる。

「一ノ瀬さん」

「はい」

「本当にお疲れ様でした」

深く頭を下げる。

「現場でも、いろいろ教えてもらって……正直、めちゃくちゃ勉強になりました」

「私の方こそ」

そう返すと、林くんは少しだけ照れたように笑った。

「俺、一ノ瀬さんみたいなフライトナースになれるよう頑張ります」

その言葉に、胸がじんわり温かくなる。

「楽しみにしてます」

そう言うと、林くんは「はい!」と力強く頷いた。

そのやりとりを見ていた奏くんがニヤニヤする。

「うわ〜青春じゃん」

「やめろ」

蒼依くんがすぐ突っ込む。

「でも林くんガチで成長したよな」

「最初結構緊張してたのに」

「一ノ瀬さん効果すごい」

「いややめてくださいほんと」

林くんが真っ赤になる。

その流れに、テーブルはまた笑いに包まれた。

ふと視線を横に向けると。

陽貴くんは少し離れた場所で、グラスを回しながらその様子を見ていた。

目が合うと、軽く笑う。

「人気だな」

「違います」

即答すると、陽貴くんがふっと笑う。

「分かってる」

でもその声は、どこか楽しそうだった。

その時、優朔さんがグラスを置いて立ち上がる。

「じゃあさ」

「せっかくだから一言ずついこうか」

「えー!!」

「まだあるの!?」

文句が飛びつつも、みんな結局ちゃんと聞く姿勢になる。

優朔さんが笑って。

「まずは監督!」

監督がグラスを軽く持ち上げると、会場の空気がすっと引き締まった。

「えー、まずは……」

少しだけ笑って、周囲を見渡す。

「この作品に関わってくれた全てのスタッフ、キャスト、そして医療監修チームに心から感謝します」

静かに頷く人たち。

「特にICUパートは、ただのドラマではなく“現場”として成立させたかった」

「それを支えてくれたみんなのおかげで、ここまで来られました」

一瞬だけ間を置いて。

「本当に、お疲れさまでした!」

その一言で、ぱっと拍手が広がる。

「監督〜!!」

「ありがとうございました!」

笑いと拍手の中、監督は少し照れくさそうにグラスを掲げた。