トップアイドルは白衣の天使に恋をする

「紗凪さーん!」

聞き慣れた声。

振り向くと、奏くんが走ってくる。

「今日で最後とか無理なんだけど!」

「俺、紗凪さんロスになる!」

「あと100話撮れる!」

なんて、そんなことを言う奏くん。

そして

「うるさい」

後ろから低い声。

振り返ると。

今日も相変わらず格好いい陽貴くん。

衣装姿のまま、こちらへ歩いてくる。

そして自然に私の隣へ立った。

その距離感がもう普通すぎて。

今では誰も何も言わない。

……いや。

正確には。

みんな“察してる”けど、あえて言わない。

そんな感じだった。

「陽貴さんひどくない?」

奏くんが抗議する。

「紗凪さんにだけ冷たくないのずるい」

「それな」

蒼依くんも頷く。

「最近隠す気ないもん陽貴さん」

「別に?」

陽貴くんは平然。

でも。

その返事のあと、自然に私の荷物を持ってくれる。

その瞬間。

奏くんと蒼依くんが同時にニヤァっと笑った。

「はい出た」

「ナチュラル彼氏ムーブ」

「だから分かりやすすぎるんだって」

「お前らうるさい」

そう言いながらも。

陽貴くんは全然嫌そうじゃない。

むしろ少し機嫌がいい。

すると優朔さんが笑いながら近づいてきた。

「はいはい、イチャイチャはあとでね」

「もう最終話なんだから集中」

「優朔さんまで……」

私が苦笑すると。

優朔さんは優しく笑った。

「でもほんと、ここまで来れてよかったね」

その言葉に。

胸がじんわり熱くなる。

ここまで来るのは簡単じゃなかった。

色んなことがあった。

苦しいことも、泣いた日もあった。

でも。

今。

こうして最後の日を迎えられている。

その事実が嬉しかった。

「……はい」

自然と笑顔になる。

黒騎士のメンバーとも熱く、硬い絆ができたように感じた

すると。

隣で陽貴くんが小さく私の手に触れた。

誰にも見えないように。

そっと。

「終わったらいっぱい褒める」

耳元で落ちる低い声。

「ここまでほんと頑張ったから」

その優しい声に。

胸がまた、ぎゅっと温かくなった。