トップアイドルは白衣の天使に恋をする

「はい、本番いきまーす!」

現場に緊張感が走る。

さっきまで笑っていた空気が、一瞬で切り替わった。

さすがプロだな、と改めて思う。

私はモニター横に立ちながら、医療動作の確認をしていく。

「点滴位置そこだと動線被ります」

「除細動パッド、もう少し上です」

「挿管介助入る人、この位置だとモニター見えないかも」

スタッフたちが「了解です!」と動いていく。

その横で黒騎士メンバーも真剣な顔になっていた。

カメラ前に立った瞬間、空気が変わる。

一気に“役”に入る。

……すごい

何度見ても引き込まれる。

「3、2、1——スタート!」

モニターアラーム音。

緊迫したICUシーン。

優朔さんが医師役として指示を飛ばす。

「血圧下がってる!」

「ノルアド上げます!」

蒼依くんが処置に入る。

そして陽貴くん。

真剣な表情で患者の元へ走る。

「SpO2落ちてる!」

「バッグ入ります!」

動きに無駄がない。

前より明らかにうまくなってる。

自然と感心していると。

「カット!!」

監督の声。

「いいね!!」

現場が少し緩む。

すると。

監督がこちらを見る。

「一ノ瀬さんどうです?」

「すごく良かったです」

素直にそう言うと。監督が嬉しそうに頷いた。

「でしょー!」

すると奏くんが汗を拭きながら近づいてくる。

「紗凪ちゃん先生〜どうでした俺!」

「さっきの血圧測る動き自然でしたよ」

「やったぁ!」

子供みたいに喜ぶ。

「でもルート持つ位置ちょっと危ないかもです」

「あっまじ?」

「ここだと抜けやすいので」

「あーなるほど!」

真剣に聞いてくれる。

すると横から蒼依くん。

「俺は?」

「蒼依くんは前よりだいぶ上手くなってます」

「え、嬉し」

「ただ清潔操作たまに怪しいです」

「あーそこ毎回怒られる〜!」

現場が笑いに包まれる。

その時。

「……俺は?」

低い声。

振り返る。

陽貴くん。

汗で少し髪が乱れてる。

それだけで妙に色気がある。

「えっ」

「評価」

真顔。

でも。

少しだけ期待した顔。

それがおかしくて。

「……すごく良かったです」

そう言うと。

陽貴くんの口元が少し緩む。

「へぇ」

嬉しそう。

分かりやすすぎる。

すると。

後ろで奏くんがボソッと呟く。

「今の顔見た?」

「見た」

蒼依くん即答。

「完全に彼女に褒められた男の顔」

「やめろ」

陽貴くんが即反応。

でも。

否定が弱い。

「いや絶対黒だって」

「もう確信なんだが」

ヒソヒソ盛り上がる二人。

私は思わず視線を逸らした。

そんな中優朔さんだけが少し離れた場所で笑っている。

全部分かってる顔。

そして。

小さく肩をすくめた。

「まぁ、幸せそうで何より」

その呟きは。

誰にも聞こえなかった。