トップアイドルは白衣の天使に恋をする

2人で並んでゆっくり歩く。

夜の空気は少し冷たくて。

でも隣にいる陽貴くんの手があったかいから、不思議と寒くない。

「こうやって普通に歩けるの珍しいね」

私がそう言うと。

陽貴くんが繋いだ手を軽く揺らした。

「たしかに」

「なんかデートっぽい」

「っ……」

その言葉だけで少し照れる。

すると。陽貴くんが横目で私を見て笑った。

「照れてる」

「照れてない」

「いや照れてる」

くすくす笑い合う。

そんな何気ない時間が幸せだった。

少し歩いた先。

人通りの少ない公園の前で、陽貴くんが立ち止まる。

「座る?」

ベンチを指差す。

「うん」

二人で並んで腰掛ける。

静かな夜。

遠くで車の音だけが聞こえる。

すると。

陽貴くんがぽつりと呟いた。

「……なんか不思議」

「何が?」

「少し前まで、紗凪がこんな風に笑ってるの想像できなかった」

その言葉に。

胸が少しきゅっとなる。

たしかに。あの頃の私は毎日不安で苦しくて笑う余裕なんてなかった。

「……陽貴くんがいたからだよ」

自然とそう言葉が出る。

すると。

陽貴くんが少し目を丸くした。

「俺?」

「うん」

「陽貴くんがずっと支えてくれたから」

「信じてくれたから」

「……今こうして笑えてる」

そう言うと。

陽貴くんがふっと笑った。

でも。

その目はすごく優しかった。

「俺さ」

ぽつり。

「紗凪が苦しそうなの見るの、ほんと無理だった」

「……」

「代わってあげられたらって何回も思った」

静かな声。

でも。

そこには本気が滲んでる。

「だから、今こうやって笑ってるの見ると安心する」

その言葉に。

胸の奥がじんわり熱くなる。

「……陽貴くん」

名前を呼ぶと。

陽貴くんが私を見る。

その瞬間。

ふわっと頭を撫でられた。

「頑張ったな」

優しい声。

その一言だけで。

涙が出そうになる。

「……うん」

小さく頷くと。

陽貴くんがゆっくり私を引き寄せた。

肩に頭を預ける形になる。

「今日くらい甘えていいよ」

耳元で落ちる低い声。

「いつも頑張りすぎだから」

その言葉に。

張っていたものが少しほどける。

「……じゃあ甘える」

素直にそう言うと。

陽貴くんが一瞬固まった。

「え」

「ん?」

「待って、今のやばい」

「何が?」

「可愛すぎ」

「大袈裟だよ」

笑って返すと。

陽貴くんが額を押さえた。

「ほんと心臓に悪い……」

その反応がおかしくて。

私は声をあげて笑ってしまう。

すると。
陽貴くんが嬉しそうに目を細めた。

「やっぱ紗凪の笑った顔好き」

「……急にそういうこと言う」

「ほんとだから仕方ない」

そして。

そっと頬に触れてくる。

そのまま。

ゆっくり距離が近づいて——

触れるだけの優しいキスが落ちた。

夜風の中。

大好きな人の温度に包まれて。

私は静かに目を閉じた。