トップアイドルは白衣の天使に恋をする

次の日。

私は日勤。

陽貴くんは午後から雑誌取材と夜に番組収録らしい。

朝からお互い忙しくて。

メッセージもほとんどできなかった。

それでも昼休憩で携帯を開けば。

『ちゃんとご飯食べた?』

『無理してない?』

そんなメッセージが届いていて。

忙しいはずなのに、ちゃんと気にかけてくれてることが嬉しくなる。

『食べたよ』

『陽貴くんは?』

そう返すと。

数分後。

『今から』

『紗凪不足で死にそう』

思わず吹き出した。

『大袈裟』

『大袈裟じゃない』

『昨日会えてないし』

子供みたい。

でもそんなところが可愛く思えてしまう。

午後もバタバタだった。

フライト要請が入り。

ドクターカー対応も重なって。

気づけば外はすっかり暗い。

ようやく業務を終え、更衣室へ向かう。

「はぁ……疲れた」

小さく呟きながらロッカーを開ける。

すると携帯にメッセージ。

『病院前いる』

「えっ」

思わず声が漏れる。

時刻を見る。

もう22時前。

『収録終わったから来た』

『5分だけでも顔見たい』

その文字を見た瞬間急いで着替えを済ませて病院を出る。

夜の病院前。

少し冷たい風。

そして。

街灯の下に立っていた黒帽子の男。

マスクをしてても。

遠目でも分かる。

私を見つけた瞬間彼の顔がぱっと顔が上がる。

その瞬間。

陽貴くんがすごく嬉しそうに笑った。

「紗凪」

次の瞬間。

大股で近づいてきて。

ぎゅうっと抱きしめられる。

「っ……!」

「会いたかった」

低い声。

そのまま肩へ顔を埋められる。

「陽貴くん、外だよ」

「5秒だけ」

「絶対嘘」

「うん」

認めた。

思わず笑ってしまう。

でも抱きしめる腕が本当に愛おしそうで。

胸がじんわり温かくなる。

「今日ほんと忙しかった」

ぽつりと呟く陽貴くん。

「取材でずっと笑ってたから顔筋痛い」

「あはは」

「でも紗凪見た瞬間全部どうでもよくなった」

さらっとそんなこと言う。

「……ずるい」

「なにが?」

「そういうこと自然に言うの」

すると。

陽貴くんが少し身体を離して、私を見る。

「だってほんとだし」

真っ直ぐな目。

その視線に耐えきれなくて逸らそうとすると。

顎をそっと掴まれる。

「逃げた」

「逃げてない」

「逃げてる」

楽しそうに笑う。

そして。

不意打ちみたいに額へキスを落とされた。

「っ……!」

「今日頑張ったご褒美」

「だから外っ」

慌てる私を見て。

陽貴くんが声を殺して笑う。

「かわい」

「もう帰る!」

「ごめんって」

そう言いながらも。

また手を握ってくる。

全然反省してない。

でも。

その大きな手の温度が心地よくて。

私は結局、その手を振り払えなかった。

「……少しだけ散歩する?」

そう聞くと。

陽貴くんの目がぱっと輝く。

「する」

即答。

その顔が嬉しそうすぎて。

私はまた、小さく笑ってしまった。