トップアイドルは白衣の天使に恋をする

職場に着きその日も慌ただしく業務をこなしていた。

気づけばあっという間に昼前。

ナースステーションで記録を入力していると。

「一ノ瀬」

顔を上げる。

そこには師長さん。

「ちょっといい?」

「はい」

師長さんについて行き、師長室へ入る。

パタン、と扉が閉まる。

「座って」

そう言われ椅子に座ると。

師長さんがふっと笑った。

「ドラマの件なんだけど」

その言葉に、少し姿勢を正す。

「花宮胡桃さんの代役、正式に決まったわ」

「新しい女優さん入れて撮影再開ですって」

その言葉に。

胸の奥がほっと緩む。

止まっていた時間が、また動き出す。

「よかった……」

自然と声が漏れる。

すると師長さんが優しく頷いた。

「ほんとに色々あったものね」

「でも現場側もかなり慎重に動いてるみたい」

「今回は管理体制も見直すって話よ」

それを聞いて、安心する。

あんなことは、もう二度と起きてほしくない。

そして師長さんが少し表情を和らげた。

「それでね、一ノ瀬」

「はい?」

「また現場指導、お願いできないかしら」

「……私ですか?」

「そう」

師長さんは迷いなく頷いた。

「監督さん側からも“一ノ瀬さんでお願いしたい”って」

「医療監修の先生たちからも評判よかったみたい」

少し驚く。

でも同時に嬉しかった。

「もちろん、無理なら断っていいのよ」

「ヘリも再開したばっかりだし、負担になるなら——」

「やります」

気づけば即答していた。

師長さんが少し目を丸くする。

「大丈夫?」

「はい」

自然と笑みが浮かぶ。

「またみなさんと一緒に仕事できるの、嬉しいので」

そう言うと。

師長さんがふっと優しく笑った。

「……やっぱりあなた、現場好きなのね」

「はい」

ICUも。

フライトも。

あの撮影現場も。

全部、大変だけど好きだ。

「撮影再開は明後日から。また忙しくなるわよ〜?」

「頑張ります」

そう返事をすると。

師長さんが満足そうに頷いた。

「黒騎士のメンバーも喜ぶでしょうね」

その瞬間。

頭に浮かぶのは陽貴くんの顔。

絶対嬉しそうに笑う。

むしろ抱きついてきそう。

そう思った瞬間。

自然と口元が緩んだ。

「……ふふ」

「なにその顔。もしかしてあんた…」

「っ!?!?」

図星すぎて固まる。

すると。

師長さんが楽しそうに笑った。

「分かりやすいわねぇ」

「ち、違っ……」

「はいはい」

完全にバレてる。

顔が熱くなる。

そんな私を見ながら。

師長さんはどこか安心したように笑った。

「でもほんと、よかったわ」

「一ノ瀬がちゃんと笑えるようになって」

その言葉に。

胸がじんわり温かくなる。

色んなことがあった。

苦しかった。

怖かった。

でも。

ちゃんとまた前を向けている。

それはきっと。

たくさんの人が支えてくれたからだ。