トップアイドルは白衣の天使に恋をする

朝。

ぼんやり目を開けて。

身体を起こそうとした瞬間。

「っ……」

思わず変な声が漏れた。

足に全然力が入らない。

というか。全身がだるい。

完全なる筋肉痛。

「……もう」

ベッドの上で小さく呟きながら。

隣を見る。そこには気持ちよさそうに眠る陽貴くん。

整った顔。

無防備な寝顔。

……なのに。

昨夜は全然無防備じゃなかった。

「ほんと……離してくれなかった……」

思い出した瞬間、一気に顔が熱くなる。

約束の“3回戦”どころじゃなかった。

途中から回数なんて分からない。

「……バカ」

小さく睨む。

でも気持ちよさそうに眠る顔を見ると、なんだか怒りきれない。

なんとかベッドから降りて。

ふらつきながらリビングへ向かう。

「いたた……」

絶対今日は夜勤じゃなくてよかった。

そんなことを思いながら。

朝ごはんの準備を始める。

コーヒーを淹れて。

パンを焼いて。

卵を準備していると。

後ろから、ぎゅうっと抱きしめられた。

「っ……!」

聞き慣れた低い声。

「おはよ、紗凪」

まだ寝起きっぽい掠れた声。

「……おはよう」

「朝からかわいい」

「寝起きだよ?」

「それでもかわいい」

即答。

そして当然みたいに腰へ手を回してくる。

「陽貴くん、離して」

「やだ」

「準備できない」

「俺が補給中」

またそれ。

服の裾からするっと手が入ってきた。

「っ!?!?」

「陽貴くん!!」

慌てて振り返る。

でも陽貴くんは全然反省してない顔。

むしろ楽しそう。

「紗凪ちゃんは朝から元気だね」

「誰のせいだと思ってるの!?」

抗議すると。

陽貴くんが肩へ顔を埋めながら笑う。

「昨日の紗凪可愛かったなー」

「っ……!」

思わず。

べしっ。

軽く頭を叩いた。

「痛っ」

「当然です」

「暴力反対」

「セクハラ反対」

ぴしゃっと言い返すと。

陽貴くんがしゅん……と分かりやすく肩を落とした。

「……怒られた」

「当たり前」

でも全然懲りてない顔。

そんな陽貴くんを横目に。

私は朝ごはんの準備を続ける。