病院に着く頃には、なんとか気持ちも切り替わっていた。
……たぶん。
でも。
エレベーターを降りる瞬間、不意に思い出す。
“今日も3回戦はしようね”
「っ……」
思わず顔を覆いたくなる。
朝からあんなこと言うなんて反則だ。
しかも本人、完全に楽しんでたし。
「一ノ瀬さん?どうしました?」
後ろから声をかけられて、ハッとする。
「あ、いえ!なんでもないです!」
慌てて笑顔を作る。
危ない。
仕事モード、仕事モード。
そう自分に言い聞かせて、ICUへ向かった。
そこからはいつも通り慌ただしかった。
夜間入院の申し送り。
人工呼吸器管理。点滴確認。検査出し。ドクターコール。
気づけばあっという間に時間が過ぎていく。
忙しい。
「一ノ瀬さん、2ベッドのCVルート確認お願いします!」
「はーい」
返事をしながら動く。
患者さんの部屋へ入り、状態確認。
モニター波形。SpO2。輸液。
問題なし。
そんな時だった。
病室のテレビから、聞き慣れた声が流れてきたのは。
『この夏は、もっと自由に——』
ふと視線を向ける。
そこに映っていたのは爽やかに笑う陽貴くん。
その隣には黒騎士のメンバーたち。
新しい飲料CMらしい。
「あっ、これ今人気のグループの子よねぇ」
患者さんがテレビを見ながら言う。
「かっこいいわよねぇ」
「……っ」
不意打ちすぎて、心臓が跳ねた。
画面の中の陽貴くんは、病院で甘えてくる大型犬とは別人みたいにキラキラしている。
完璧な笑顔。自然な演技。圧倒的な存在感。
周りの空気を一瞬で変える力。
テレビの中の“アイドル・陽貴”。
私は思わず、その姿を見つめてしまう。
……ほんとに、この人アイドルなんだな
今さらみたいに実感する。
普段の陽貴くんは。
「行かないで」とか。
「紗凪不足」とか。
朝から抱きついて離れなかったりとか。
そんな甘えん坊な姿ばっかりだから。
つい忘れそうになる。
でもテレビの中の彼は、本当に眩しくて。
かっこよくて。
たくさんの人を惹きつける存在だった。
「一ノ瀬さん?」
ハッと我に返る。
「あ、はい!」
「タイプなんだ?(笑)」
同じ部屋にいた先輩ナースがニヤニヤしている。
「えっ!?違います!」
慌てて否定する。
でも。先輩はさらに笑った。
「いや分かるよ〜、あの子かっこいいもんね」
「最近CMすごい見るし」
「人気すごいよね」
そう言われるたびに。
なんだか変な気持ちになる。
誇らしいような。
遠い存在みたいで少し寂しいような。
同時に思う。
そんな人が朝、「行かないで」って抱きついてきて。
“帰ったら俺優先”なんて言って。
私に甘えてくれる。
……なんか、不思議。
自然と口元が緩む。
すると。
患者さんがテレビを見ながらぽつりと言った。
「でもこの真ん中の子、恋人できたら絶対一途そうよねぇ」
「……っ!?」
思わずむせそうになる。
「私にはわかる、長年生きてきた勘でね」
とおばさまがそう言う。
さすが…
だって。めちゃくちゃ当たってる。
しかも。
かなり重めに一途だ。
……たぶん。
でも。
エレベーターを降りる瞬間、不意に思い出す。
“今日も3回戦はしようね”
「っ……」
思わず顔を覆いたくなる。
朝からあんなこと言うなんて反則だ。
しかも本人、完全に楽しんでたし。
「一ノ瀬さん?どうしました?」
後ろから声をかけられて、ハッとする。
「あ、いえ!なんでもないです!」
慌てて笑顔を作る。
危ない。
仕事モード、仕事モード。
そう自分に言い聞かせて、ICUへ向かった。
そこからはいつも通り慌ただしかった。
夜間入院の申し送り。
人工呼吸器管理。点滴確認。検査出し。ドクターコール。
気づけばあっという間に時間が過ぎていく。
忙しい。
「一ノ瀬さん、2ベッドのCVルート確認お願いします!」
「はーい」
返事をしながら動く。
患者さんの部屋へ入り、状態確認。
モニター波形。SpO2。輸液。
問題なし。
そんな時だった。
病室のテレビから、聞き慣れた声が流れてきたのは。
『この夏は、もっと自由に——』
ふと視線を向ける。
そこに映っていたのは爽やかに笑う陽貴くん。
その隣には黒騎士のメンバーたち。
新しい飲料CMらしい。
「あっ、これ今人気のグループの子よねぇ」
患者さんがテレビを見ながら言う。
「かっこいいわよねぇ」
「……っ」
不意打ちすぎて、心臓が跳ねた。
画面の中の陽貴くんは、病院で甘えてくる大型犬とは別人みたいにキラキラしている。
完璧な笑顔。自然な演技。圧倒的な存在感。
周りの空気を一瞬で変える力。
テレビの中の“アイドル・陽貴”。
私は思わず、その姿を見つめてしまう。
……ほんとに、この人アイドルなんだな
今さらみたいに実感する。
普段の陽貴くんは。
「行かないで」とか。
「紗凪不足」とか。
朝から抱きついて離れなかったりとか。
そんな甘えん坊な姿ばっかりだから。
つい忘れそうになる。
でもテレビの中の彼は、本当に眩しくて。
かっこよくて。
たくさんの人を惹きつける存在だった。
「一ノ瀬さん?」
ハッと我に返る。
「あ、はい!」
「タイプなんだ?(笑)」
同じ部屋にいた先輩ナースがニヤニヤしている。
「えっ!?違います!」
慌てて否定する。
でも。先輩はさらに笑った。
「いや分かるよ〜、あの子かっこいいもんね」
「最近CMすごい見るし」
「人気すごいよね」
そう言われるたびに。
なんだか変な気持ちになる。
誇らしいような。
遠い存在みたいで少し寂しいような。
同時に思う。
そんな人が朝、「行かないで」って抱きついてきて。
“帰ったら俺優先”なんて言って。
私に甘えてくれる。
……なんか、不思議。
自然と口元が緩む。
すると。
患者さんがテレビを見ながらぽつりと言った。
「でもこの真ん中の子、恋人できたら絶対一途そうよねぇ」
「……っ!?」
思わずむせそうになる。
「私にはわかる、長年生きてきた勘でね」
とおばさまがそう言う。
さすが…
だって。めちゃくちゃ当たってる。
しかも。
かなり重めに一途だ。
