トップアイドルは白衣の天使に恋をする

「海外どうだったの?」

歩きながら聞くと。

陽貴くんは大きくため息を吐いた。

「地獄」

「えっ」

「時差あるし忙しいし、紗凪いないし」

「最後関係なくない?」

「1番関係ある」

また即答。

「ホテル帰っても寂しいし」

「電話したくても紗凪夜勤だったりするし」

「しかも帰国した日にフライト復帰とか聞かされたら、会いたくて死ぬ」

そんなことを真っ直ぐ言うから。

胸がぎゅうっとなる。

「……私も会いたかった」

小さく言うと。

陽貴くんがぴたりと止まった。

「……今なんて?」

「えっ」

「もう一回」

「やだ」

「なんで」

「恥ずかしいから」

すると。

陽貴くんがすごく嬉しそうに笑った。

「無理。可愛すぎる」

そしてそのまま。

人が少ない夜道で、急に引き寄せられる。

「っ、陽貴くん!」

「ちょっとだけ」

マスク越し。

軽く触れるだけのキス。

でも。

久しぶりすぎて、心臓が一気に跳ねる。

「……はぁ」

離れたあと、陽貴くんが幸せそうに息を吐いた。

「生き返った」

「大げさ」

「ほんとだもん」

そう言いながら、今度は指を絡めてくる。

恋人繋ぎ。

その手があったかい。

「今日、帰したくない」

ぽつりと落ちる声。

「……明日日勤?」

「うん」

「じゃあ今日は絶対早く寝かせる」

「……ほんとに?」

疑いの目を向けると。

陽貴くんが目を逸らした。

「……努力はする」

「絶対嘘」

「だって1週間ぶりなんだけど」

また甘えるような声。

そんな陽貴くんが可愛くて。

愛おしくて。

私は繋いだ手を少しだけ握り返した。

すると。

陽貴くんが嬉しそうに笑う。

「……やばい」

「今のでまた好き更新した」

「そんな毎回更新する?」

「する」

真っ直ぐな答え。

その横顔を見ながら。

私は思った。

あぁ。

やっぱりこの人といる時間が、いちばん幸せだ。