トップアイドルは白衣の天使に恋をする

屋上に着くといつもより少し早い時間なのに、ヘリスタッフたちがすでに集まっていた。

フライトドクター。

操縦士。

整備士。

CS。

みんなが自然とこちらを見る。

そして。

「おはよう、一ノ瀬」

「待ってたよ」

「復帰おめでとう」

次々に声をかけてくれる。

その温かさに、胸がいっぱいになる。

「……ありがとうございます」

頭を下げると。

フライトドクターが笑った。

「今日は肩慣らしで終わればいいけどね」

その言葉に周囲が苦笑する。

でも。

ドクターヘリは、そんな都合よくいかない。

いつ何が起こるか分からない。

だからこそ。

私はゆっくりヘリを見上げた。

朝日に照らされた機体。

何度も乗った場所。

怖かった場所。

でも。

それ以上に、大好きな場所。

自然と拳を握る。

――戻ってきた。

そう実感した、その時。

「ドクターヘリ、エンジンスタート」

無線の声が響く。

空気が、一瞬で変わる。

さっきまでの穏やかさが消える。

全員の表情が切り替わる。

フライトドクターがPHSを受け取る。

「交通外傷、40代男性。意識レベル低下あり」

その瞬間。

私の身体も自然に動いていた。

怖くないと言えば嘘になる。

でも。

もう足は止まらなかった。

「一ノ瀬、行ける?」

私はまっすぐ頷く。

「はい」

その返事は、自分でも驚くほど迷いがなかった。