トップアイドルは白衣の天使に恋をする


梓もすぐ察して動く。

「店員さん、袋とタオルありますか!」

「は、はいっ!」

周りはざわざわしていた。

でも不思議と。

私たちの周囲だけは、やけに静かだった。

必要なことを。

必要な順番で。

ただ淡々とやる。

身体が自然に動く。

「紗凪換気できてる?」

「呼吸はまだ保ててる」

「OK」

短いやり取り。

それだけで通じる。

数分後。

店の外からサイレンが聞こえた。

「救急隊来た!」

周囲が少し安堵する。

救急隊員が入ってくる。

私はすぐ状況を伝える。

「20代男性、急性アルコール中毒疑い。意識レベル低下あり、呼吸自発あり、嘔吐ありです」

救急隊員が驚いた顔をした。

「ありがとうございます、助かりました」

その間にも梓が友人たちへ説明している。

「付き添い誰行く?」

「保険証ある?」

冷静で的確。

ほんと頼もしい。

搬送されていく男の子。

友達たちは何度も頭を下げていた。

「ありがとうございました……!」

「ほんとに……」

私は小さく笑う。

「大丈夫。ちゃんとついててあげてね」

そう言うと。

救急隊員の1人が、ふっと笑った。

「お二人、医療者ですよね?」

梓が苦笑する。

「バレました?」

「動きで分かります」

その言葉に。

私たちは顔を見合わせて、少し笑った。

「中央大学病院に運んであげてください。七瀬と一ノ瀬の名前出せば受け入れてくれると思います」

梓がそう言って救急隊の方はペコっと頭を下げた。

気づけば店内の緊張も少し解けていて。

店員さんが「本当にありがとうございました……」と何度も頭を下げていた。

席へ戻る途中。

梓がぽつりと言う。

「あんたの患者呼び寄せる体質は相変わらず健在ね」

と呆れたように笑う。

「ほんと…自分でも思います」

2人で顔を見合わせ笑った。