トップアイドルは白衣の天使に恋をする

病院に着く。

見慣れた建物。

何度も通った入口。

何度も歩いた廊下。

なのに今日は、足が少しだけ重かった。

エレベーターの鏡に映る自分を見る。

ちゃんと笑えてるかな。

大丈夫かな。

またみんなと普通に働けるかな。

そんな不安が、まだ胸の奥に少し残っている。

でも。

逃げたくはなかった。

ここが、私の居場所だから。

ぎゅっとバッグを握りしめる。

そして。

ゆっくりICUへ向かった。

自動ドアの前に立つ。

胸がドクドクとうるさい。

ほんの数秒なのに、すごく長く感じる。

――ウィーン。

扉が開いた。

その瞬間。

「一ノ瀬さん!!」

「紗凪ちゃん!」

「おかえりー!!」

一気に声が飛んできた。

「……っ」

気づけば、たくさんの人がこっちを見ていた。

ナースのみんな。

ドクター。

薬剤師さん。

臨床工学技士さんまで。

みんな、手を止めてこっちを見てる。

「よかったぁ……!」

「ほんと心配したんだからね!」

「戻ってこれてよかった……!」

次々かけられる言葉。

優しく肩を叩いてくれる人。

安心したように笑う人。

中には本気で泣きそうな顔をしてる人までいて。

胸が、じわっと熱くなる。

「……ありがとうございます」

自然と頭が下がった。

すると。

「いやほんと、一ノ瀬さんいないICU回らなかったから!」

「それな!」

「空気違ったよね」

「めちゃくちゃ静かだったもん」

「分かる〜!」

みんなが口々に喋る。

その光景があまりにも温かくて。

涙が出そうになる。

「一ノ瀬さんいないと相談相手いなくて困るし!」

「夜勤ほんと寂しかった!」

「先生たちもなんかピリついてたよね」

「いやあれは普通に業務回ってなかったからだろ」

「お前も紗凪ちゃんロスだったくせに」

「違うし!」

わちゃわちゃと騒ぐみんな。

思わず、ふっと笑ってしまう。

すると。

「笑った〜!」

「よかった、ちゃんと元気そう!」

「顔見れて安心した!」

また一気に声が飛んでくる。

こんなにも、自分のことを待ってくれていた人たちがいた。

それが嬉しくて。

苦しかった1週間が、少しだけ報われた気がした。